2019年度文化資源学的アクティビティ(活動)紹介

2020.04.04

  • 文歴

山畑古墳群と東大阪市立郷土博物館の現地研修(「基礎研究」、担当:網伸也)
今年も東大阪市立郷土博物館に基礎研究で伺い、山畑古墳群のサイトミュージアムについて学んできました。山畑古墳群は生駒山地西麓に造営された、東大阪市を代表する古墳時代後期の群集墳であり、東大阪市立郷土博物館は古墳群のサイトミュージアムとして建設されました。研修では郷土博物館が建設された経緯や、現在のわれわれが抱えている文化財行政の問題などを博物館の学芸員のかたから話をうかがい、特別展示室では展示内容や展示の方法・工夫などを解説していただきました。文化財の公開・活用だけでなく、文化財保護の問題やこれからの文化財行政のありかたを考えるうえで、良い機会になりました。
【年月日:2019年11月19日】
東大阪市立郷土博物館 特別展示室 山畑古墳群

石の宝殿及び竜山石採石遺跡と世界遺産姫路城の現地踏査(「演習IB」、担当:網伸也)
考古学ゼミでは毎年文化遺産の現地踏査を行っていますが、今年は国指定史跡である「石の宝殿及び竜山石採石遺跡」と世界遺産の姫路城を見学しました。石の宝殿は兵庫県高砂市の生石神社に残る巨大な竜山石のモニュメントで、周辺は畿内の古墳の石棺や古代寺院の石材などに多く使用された竜山石の採石遺跡でもあります。現地踏査によって古代ヤマト王権の石材供給の実態や、謎の石造物である石の宝殿について皆で考えることができました。また、姫路城は大天守の保存修理が2015年に完了し、当初の美しい姿がよみがえっています。今回の踏査では城郭構造についてのゼミ発表をうけて、城が立地する地形あるいは石垣や曲輪の構造を現地で確認するとともに、文化財修理についても多く学ぶことができました。
【年月日:2019年12月15日】
竜山石採石遺跡 姫路城

国立民族学博物館の見学(「演習IB」、担当:辻河典子)
西洋近現代史ゼミの3年生有志6名と、吹田市万博公園内にある国立民族学博物館を訪問しました。午前に特別展「驚異と怪異―想像界の生きものたち」、午後に常設展を見学しました。見学メンバーの中には小・中学生の頃に校外学習で同博物館を訪れたことがある学生も数名いましたが、大学入学後に世界各地の歴史や文化に関する知識を得たことで、展示の面白さや博物館が持つ役割・意義をより深く理解できるようになったと話してくれました。学芸員課程を履修中の学生たちは、これまで受けてきた博物館学関連の授業や博物館実習での経験をふまえて、展示の技術的な側面を分析して意見を交換していました。学生たちにとっては、大学入学後の授業で得た知識を確認する良い機会となったようです。
【年月日:2019年11月15日】
国立民族学博物館の見学の様子

博物館・美術館展示の分析(「基礎研究」(「西洋史講読IIB」、「演習IB」含む)、担当:辻河典子)
2019年度基礎研究の西洋史ゼミでは、博物館・美術館の展示の分析を扱いました。これは史料分析の基礎的な視点を養うことを目的としたもので、学生はピースおおさか(常設展および特別展「第二次世界大戦博物館展 POLAND FIRST TO FIGHT」)と国立国際美術館(特別展「ウィーン・モダン――クリムト、シーレ 世紀末への道」)を見学し、どちらか片方の展示を分析することを課題としました。阪神圏出身ではない学生も半数以上いたため、11月21日のピースおおさかへの見学の際には、大阪城の敷地にあった大阪砲兵工廠に代表される近現代の大阪の軍都としての側面をまず紹介しました。また、特別展ではナチズムと共産主義の「二つの全体主義」史観にもとづいた説明がなされていたため、見学終了後にポーランド現代史の概略の紹介とともに、この歴史観についても学生たちに解説しました。
11月27日の国立国際美術館への見学には、西洋史講読IIBの2・3年生と演習IBの3年生たちも参加し、総勢22名での学年を超えた見学会になりました。展覧会のタイトルは世紀末ウィーンでしたが、18世紀の啓蒙主義の時代にヨーロッパで始まった近代化がウィーンではいかに進行し、それが芸術や工芸の分野に反映されたのかというテーマが展示全体を貫いていました。この展示を取り上げた学生のレポートでは文化を政治・社会と結びつけて考えることの意義を考察したものが大半でしたが、中には、展覧会のタイトルと展示全体のテーマとのずれを指摘したものや、展示室の壁の色が創り出す空間全体の印象を分析したものもあり、美術館の展示を今までとは少し違った角度から考えるきっかけになったようです。また、西洋史講読IIBの受講者には授業での課題文献(19世紀後半から20世紀初頭のハプスブルク史に関する論文)を理解する助けとして、演習IBの受講者には西洋近現代史を理解する上で重要な「近代化」の諸相の実例の確認の場ともなりました。
【年月日:2019年11月21・27日】
ウィーン・モダン――クリムト、シーレ 世紀末への道