角田雅照准教授らの研究グループの論文が公開

2026.09.09

  • 研究

プログラミングにおけるジェンダーステレオタイプの影響を分析

性別にかかわらず進路選択できる環境を目指して

近畿大学 角田雅照准教授らの研究グループは、プログラミングにおけるジェンダーステレオタイプの影響を分析しました。ジェンダーステレオタイプとは「数学や工学の分野においては男性の方が優れている」などの性別に基づく先入観のことです。数学ではステレオタイプと成績に関係があると指摘されています。ステレオタイプが同様にプログラミングの成績に影響して女性が苦手意識を持つと、進学や就職の進路にも関わってきます。ただし数学とは異なり、分析ではプログラミングにおいてステレオタイプを意識した場合でも、成績に影響が見られませんでした。本研究に関する論文が、令和8年(2026年)9月に電子情報通信学会が発行する英文論文誌"IEICE TRANSACTIONS on Information and Systems"に掲載されました。

1. ポイント
● 人材不足に対応するために、IT分野に進学・就職する女性を増やすことが必要
● ITの入門時に実施されるプログラミングにおける、ステレオタイプの影響を分析
● プログラミングでは影響が見られなかったが、今後さらなる分析が求められる

2. 研究の背景
近年、IT人材の不足が指摘されています。IT人材が男性に偏っているという報告は国内外で多く、女性のIT関連分野への進学・就職が進めば、IT人材不足の問題がやわらぐことが期待されます。従来研究では「男性のほうが数学が得意である」などの先入観をジェンダーステレオタイプと呼び、ステレオタイプを呼び起こすと女性の数学試験の成績が低下すると示しています。また、「この数学問題には男女差がない」というステレオタイプを抑える文により成績が改善したと報告しています。プログラミングにおいても、ステレオタイプが女子学生の成績に影響することにより、プログラミングに苦手意識を持ち、それが進学や就職にも関わってくる可能性もあります。

3. 研究の内容
プログラミングにおけるステレオタイプの影響を分析する実験を行いました。参加者は情報科学を専攻する女性学生24人、男性学生23人で、プログラムを作成する課題に取り組みました。「この問題は、これまで男女差が見られたものである」、「この問題は、これまで男女差が見られなかったものである」というステレオタイプを呼び起こす、または抑える文を示し、これらがプログラミングを完成させる時間に影響するかを分析しました。また、これらの文をどう解釈したかを聞き取りました。その結果、示した文の内容や解釈にかかわらず、プログラムの完成時間に大きな差は見られませんでした。このことから、少なくともプログラミング時間に対しては、ステレオタイプの影響が明確に見られないといえます。

4. 今後の課題・展望
実験においてはステレオタイプのプログラミングに対する影響は明確ではありませんでした。ただし数学などの他分野ではジェンダーステレオタイプの影響について広く分析されています。一方でソフトウェア関連の活動についてはほとんど分析されておらず、他の活動における影響についてもさらなる評価が求められます。今後はソフトウェア関連活動のステレオタイプ分析をすすめ、性別にかかわらないIT分野への進路決定を支援することが期待されます。

5. 論文情報
掲載誌:"IEICE TRANSACTIONS on Information and Systems"(発行:電子情報通信学会)
論文名:Empirical Analysis of the Effects of a Gender Stereotypical Cue on Computer Programming
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/transinf/E109.D/9/E109.D_2025KBL0003/_article/-char/ja
著  者:近畿大学大学院総合理工学研究科博士前期課程(当時) 高塚 由利子
     近畿大学情報学部/情報学研究所 准教授 角田 雅照
     信州大学学術研究院工学系 准教授 畑 秀明