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ニュースリリース

農学部バイオサイエンス学科 世界初!「白葉枯病菌」が増殖する仕組みを解明

2014年11月13日

近畿大学農学部(奈良市中町)バイオサイエンス学科教授 川﨑努と日本学術振興会特別研究員 石川和也による研究グループは、イネの最大の病害の一つである「白葉枯病菌(しらはがれびょうきん)」が増殖する仕組みを世界で初めて解明しました。この件に関する論文が、世界的に有名な英国のオンライン科学誌「ネイチャー コミュニケーションズ」に、11月12日付で掲載されました。

【本研究のポイント】

● イネの最大の病害の一つである「白葉枯病菌」が増殖する仕組みを世界で初めて解明
● 本研究の成果を応用し、病原菌に強い耐病性植物や環境にやさしい農薬の開発に期待

【研究の概要】

植物は、病原菌の侵入を検出し、速やかに防御応答する仕組みを持っています。一方、病原菌は、エフェクターと呼ばれるタンパク質を植物の細胞内に送り込むことで、植物の防御応答を阻害します。川﨑教授らの研究では、イネの最大の病害の一つである「白葉枯病菌」が、イネの免疫応答を阻害するためにイネの細胞内に送り込むエフェクターの種類を特定し、それがどのようにイネの免疫応答を阻害しているのかを、世界で初めて明らかにしました。

【研究の背景】

病害による作物の損害は世界で約15%に上り、毎年10億人分の作物が失われています。また、本研究で解析された「白葉枯病菌」は、アジア各地で今なお猛威を振るっています。
安定的な農業生産を実現するためには、病害による損害を極力抑え、低農薬による環境保全型農業を支える耐病性技術の開発が必要とされています。

【掲 載 誌】

■雑誌名:「ネイチャー コミュニケーションズ(Nature Communications)」
       世界的に有名な英国の科学誌、インパクトファクター10.742
■論文名:Bacterial effector modulation of host E3 ligase activity suppresses PAMP-triggered immunity in rice
       (細菌エフェクターによる宿主のユビキチンE3リガーゼの制御は、イネの免疫応答を抑制する)

【研究の詳細】

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研究チームは、イネの最大の病害の一つである「白葉枯病菌」が、イネの免疫応答を阻害するために、ある種のエフェクターをイネの細胞内に送り込み、免疫タンパク質の機能を阻害していることを発見しました。
この免疫タンパク質は、基質となるタンパク質にユビキチンと呼ばれる小さなタンパク質を付加する酵素でした。一般に、タンパク質は、ユビキチンを付加することにより、分解や酵素活性の制御を受けています。

今回の研究成果により、免疫タンパク質はユビキチンを付加することを介して、免疫応答を正しく制御していることがわかりました。さらに、白葉枯病菌のエフェクターは、免疫タンパク質に直接結合し、免疫タンパク質の酵素活性を阻害することで、イネの免疫応答を阻害していることがわかりました。
これまで、病原菌のエフェクターが植物・動物細胞内のユビキチンを付加する酵素の活性を制御するという報告はなく、本研究により、病原菌による新規な免疫抑制機構が明らかになりました。

【今後の展開】

今回の研究成果は、白葉枯病だけでなく他の細菌病の解決にも貢献が期待されます。病原菌の感染拡大においてある種のエフェクターが非常に重要な役割を果たしていることを明らかにしたため、今後、エフェクターの分泌を阻止する薬剤が見つかれば、細菌病に有効な農薬を開発することができます。

また、植物免疫誘導に係わるタンパク質を特定したことで、遺伝子操作によって免疫機能を制御することが可能になり、病原菌感染に強い耐病性植物の開発に貢献できます。また、この免疫タンパク質を標的にして効率よく作用する薬剤の開発が可能になり、植物免疫を活性化することで病害を防ぐ環境にやさしい農薬の開発にもつながります。
植物免疫の信号伝達に関しては不明な点が多く残されており、本研究が突破口となって、今後、より詳細な分子機構が解明されていくことが期待されます。

【川﨑努 プロフィール】

近畿大学農学部バイオサイエンス学科 教授  研究テーマ:植物免疫学
平成8年  九州大学大学院農学研究科にて博士号取得
       奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 助手
平成12年 米国North Carolina大学Chapel Hill校 博士研究員
平成14年 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 助教授
平成22年 近畿大学農学部バイオサイエンス学科 教授(現職)

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