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ニュースリリース

近畿大学、井村屋の共同研究 世界初!小豆煮汁が骨粗鬆症の予防・改善に 役立つことを発見! ―第60回日本食品科学工学会記念大会で発表―

2013年7月 8日

近畿大学農学部(奈良県奈良市、学部長:宇都宮直樹)の伊藤智広講師(水産学科水産利用学研究室)と井村屋グループの事業会社である井村屋株式会社(三重県津市、社長:前山健、以下井村屋)開発部は、これまで進めてきた共同研究の中で、細胞レベルにおいて小豆煮汁中の成分が骨粗鬆症の予防・改善に役立つことを世界で初めて発見しました。

ヒトの骨には、骨を作る細胞(骨芽細胞)と、古くなった骨を壊す細胞(破骨細胞)の2種類の細胞があり、これらがバランスを保ちながら少しずつ新しい骨と入れ替わること(骨代謝)で強い骨を保つことができます。骨粗鬆症とは骨芽細胞に比べ破骨細胞の働きが上回り、骨を壊す作用が強くなるために骨がスカスカ(骨密度低下)になり、もろくなる状態のことを言います。

小豆を原料とする商品を主力としている井村屋は、小豆加工品の製造段階において大量に発生する小豆煮汁に注目し、本学の伊藤智広講師と共同で研究を行いました。その結果、小豆煮汁から調製したポリフェノール成分を豊富に含む抽出液は、骨芽細胞の分化(細胞が何らかの役割を持つ細胞に変化すること)を活性化、破骨細胞の分化を抑制させることで、骨を作る働きを強め、同時に骨を壊す働きを弱める性質を持つことが判明しました。このように小豆煮汁は骨粗鬆症の予防・改善に役立つ素材として今後活用できることが期待されます。

なお、本研究成果は、平成25年(2013年)8月29日~31日に行われる第60回日本食品科学工学会記念大会(実践女子大学)において、発表を予定しています。

参考資料1(背景)

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平成23年(2011年)時点で、骨粗鬆症の患者数は1,300万人程と推定されています(日本骨代謝学会2011年版「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」より抜粋)。急速に高齢化が進むわが国では、骨粗鬆症患者数は年々増加するとともに高齢者の転倒による骨折患者数も増加しています。ひどいケースでは大腿骨骨折により自力歩行が不能となるため、寝たきりの生活へとつながります。

私たちの骨格は、骨芽細胞による骨形成(新しい骨を作ること)と破骨細胞による骨吸収(古い骨を壊すこと)によって形成・維持されています。しかしながら、加齢や栄養のアンバランス、運動障害(手足や体幹の随意的な運動がうまく行えない状態)、ホルモン分泌の異常等により骨吸収が骨形成を上回ると、骨量が減少し骨粗鬆症を発症します。近年の研究により、老化による骨形成の抑制、閉経による骨吸収の活性化が骨粗鬆症の誘因の1つであることが分かってきました。したがって、骨芽細胞と破骨細胞の分化を調節することは骨粗鬆症の予防・改善に繋がると考えられます。

本研究により、小豆煮汁は骨芽細胞および破骨細胞の分化を調節し、骨粗鬆症の予防・改善に役立つ素材であり、機能性を付与した食品の開発に活用できる可能性が見出されました。

伊藤講師は、小豆煮汁成分が骨芽細胞および破骨細胞の分化を調節することが明らかになったことで、骨粗鬆症患者の割合が高い高齢者の方々に、特に積極的に小豆食品を摂取していただき、骨粗鬆症の予防に努めていただければと考えています。とりわけ赤飯のような色出しに小豆煮汁を使っている商品の摂取をしていただけたらより効果的ではないかと考えています。

井村屋では今後も小豆を使った食文化の伝承、小豆製品の普及により一層注力するとともに、消費者の健康にも貢献すべく小豆に関する研究及びその成果を活かした食品の開発、素材としての開発を進めます。

参考資料2(試験内容)

試験サンプルは、小豆煮汁から調製したポリフェノール成分が豊富に含まれる抽出液(以下EtEx.40)を用いました。EtEx.40をマウスの前駆骨芽細胞に添加すると骨芽細胞の分化の指標であるアルカリフォスファターゼ(ALP)※1の活性が増強されることが判明しました。また、破骨細胞は、骨髄由来の単球※2系細胞が数個から数十個の細胞が分化・融合(巨核化)して骨を破壊していきます。この巨核化については酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRACP)※3を測定することで評価できます。EtEx.40はこのTRACP活性も減少させたことから、破骨細胞への分化も抑制することが示唆されました。

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  • ※1アルカリフォスファターゼ(ALP)
    リン酸化合物を分解する酵素。肝臓や骨、小腸などに含まれ、特に肝臓や胆道に障害があると、血液中に増加する。
  • ※2単球
    おもに血流中に存在し、移動性に富む白血球の一種。(感染がおこると好中球が最初にその場に集まり、それに続いて単球が集まってくる)
  • ※3酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRACP)
    破骨細胞が骨吸収する際に血中に漏出することから、破骨細胞数やその骨吸収活性の直接の指標となる唯一の骨吸収マーカー。
関連リンク
近畿大学農学部

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