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ニュースリリース

ザクロ果汁成分「エラグ酸」に「レジスチン」分泌抑制作用 近畿大学農学部グループが発見、糖尿病予防に役立つ可能性

2012年7月 9日

 近畿大学農学部(奈良市中町、学部長:宇都宮直樹)の河村幸雄教授と森山達哉准教授の研究グループは、ザクロ果汁に含まれる食品成分である「エラグ酸」が、糖尿病の発症要因となる病態「インスリン抵抗性」の原因分子の1つである「レジスチン」の分泌を抑制する働きを持つことを突き止めました。「エラグ酸」は悪玉の「レジスチン」の分泌を抑制する一方、善玉分子の分泌には影響しないという利点も判明しました。
 研究グループでは、今回の発見は、糖尿病の予防に役立つサプリメントや機能性食品の開発につながる可能性があると考えています。
 この研究は、文部科学省による私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「環境調和を志向した革新的植物アグリバイオ技術の統合型研究拠点の形成」(S1101035)の一部として行われ、米国の生化学専門誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」 の2012年1月13日号に発表済みです。

 肥満や運動不足など生活習慣に起因する糖尿病(2型糖尿病)の発症要因で最も重要とされるのが、肥満に伴う「インスリン抵抗性」と呼ばれる病態です。これは、インスリンの効きが悪くなり、インスリンが無駄遣いされる状態を指し、最終的にはインスリンの分泌がなくなって糖尿病になります。
 この「インスリン抵抗性」の原因の1つが、脂肪細胞から分泌されるホルモン類のバランスが肥満によって崩れることです。小型の脂肪細胞からは通常、善玉分子である「アディポネクチン」が分泌され、「インスリン抵抗性」を防いでいます。しかし、肥満により肥大化した脂肪細胞では「アディポネクチン」の分泌が減る一方、「レジスチン」や「TNFα」などの悪玉分子が分泌され、その結果、「インスリン抵抗性」を引き起こすと考えられています。
 従って、2型糖尿病の原因病態である「インスリン抵抗性」を予防・改善するには、脂肪細胞からの善玉分子「アディポネクチン」の分泌を増やすか減らさない一方で、「レジスチン」「TNFα」などの悪玉分子の分泌を抑えればよいと考えられます。
 しかし、これらの悪玉分子の分泌を抑える働きを持つ食品成分はこれまで、あまり知られていませんでした。
 このような研究は主にマウスをモデルにして進められてきましたが、ヒトにおいても2型糖尿病や炎症の発症に、この「レジスチン」が悪玉分子として作用することが広く認識されています。そこで、研究グループでは、培養した脂肪細胞から「レジスチン」の分泌を抑制する植物由来食品成分を探索したところ、ザクロの果汁(抽出物・糖分除去済み)に、強い分泌抑制効果があることを見出しました。また、善玉分子「アディポネクチン」の分泌には影響を与えないことも判明しました。 次に、血中の「レジスチン」濃度が高くなるような処置を施したモデルマウスにザクロ果汁(抽出物・糖分除去済み)を摂取させたところ、対照群と比べて有意に「レジスチン」濃度が低下しました。一方、善玉分子「アディポネクチン」は変化しませんでした。
 これにより、細胞レベルで観察されたことが動物実験でも実証されました。また、有意差は見られなかったものの、摂取により、血糖値など糖尿病に付随する病態も改善傾向を示しました。
 ザクロ中の有効成分を探索したところ、「エラグ酸」と呼ばれる成分がその効果を発揮することが判明しました。「エラグ酸」は天然のポリフェノール化合物で、抗酸化能などを有することは知られていましたが、「レジスチン」の分泌抑制効果があることは今回、初めて見出されました。

 今回の研究成果は、大昔から人類が食してきたザクロの果汁に含まれる食品成分が、糖尿病の予防・改善に寄与できる可能性を示したといえます。国内の患者・予備軍で2,200万人を超えるとされる糖尿病では、現段階で根本的な治療法がなく、予防こそが最大の対策であるといわれています。研究グループでは、糖尿病の予防に役立つサプリメントや機能性食品の素材として活用することで、広く国民の健康と福祉に貢献できる可能性があると考えています。

参考資料

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