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トピックス

次世代バイオ・リサイクル燃料「バイオコークス」をハウス暖房に 近畿大学、北海道下川町で実証プロジェクトを開始─北海道・全国・世界普及へ 「低炭素社会」モデル目指す─

2009年5月19日

 植物由来の次世代バイオ・リサイクル燃料「バイオコークス」※1の開発を進めている近畿大学(学長:畑博行、本部:大阪府東大阪市)は、北海道下川町などと協力し、同町内に自生する「イタドリ」※2などの植物をバイオコークスに加工して、同町内のビニールハウスの暖房用燃料として活用することで、一次産業への依存度が高い小規模都市における「低炭素化」のモデルを実証するプロジェクトを開始しました。

 本プロジェクトは、経済産業省の「平成20年度第1次補正予算『低炭素社会に向けた技術シーズ発掘・社会システム実証モデル事業』」に採択された「北海道発・草本※3資源を利活用した次世代ゼロ・エミ燃料による低炭素社会への実証モデル」※4です。
 バイオコークスは、光合成由来のバイオマスすべてを原料とし、石炭コークスの代替となるゼロ・エミッション(廃棄物ゼロ)の固形燃料。植物由来のためCO2排出はゼロカウントとされます。
 北海道内には約9万棟の農業用加温ハウスがあり、その暖房は主として重油・灯油ボイラーに依存しています。この分野でバイオコークスが重油・灯油燃料の代替となれば、化石燃料依存を解消し、CO2排出量を大幅に削減できる効果が見込まれます。これは北海道のみならず日本全国、さらには世界に共通する状況といえます。
 バイオコークス開発者で、本プロジェクトのリーダーでもある井田民男・近畿大学理工学部准教授はこれまで、製鉄や鋳鉄工程における石炭コークス代替を主な目的にバイオコークスの研究開発を進め、昨年、自動車エンジン部品を作る実用大型鋳造炉で石炭コークスの11.4%代替に成功※5しました。今回は、より身近な農業用暖房という用途に寄与するため、従来より小さなバイオコークスを製造し、より小型のボイラーで効率的に燃焼させるという、新たな技術的課題に挑戦することになります。

 本プロジェクトでは、下川町を舞台にした検証を通じてこれらの課題を克服し、北海道全域から全国、さらには世界レベルでの普及へとつながるモデルケースの確立を目指します。

 本プロジェクトは2010年3月末までを実施期間とし、主な実施事業は以下の通りです。

(1)    広く薄く点在する草本バイオマスを収集し、バイオコークスを製造するための装置(バイオマス収集とバイオコークス製造を1台の車両上で行える装置=車両)を開発する。
-    装置(車両)開発: 札幌ボデー工業(株)

(2)    上記(1)で製造したバイオコークスを効率よく燃焼させ、加温ハウスの暖房を行うための農業用小型ボイラーを研究・開発する。
-    ボイラー開発: (株)ナニワ炉機研究所

(3)    上記(1)で開発した装置(車両)によって、下川町内に自生するイタドリなどの草本バイオマスを収集し、これを原料にバイオコークスを製造する。

(4)    上記(2)で開発した農業用小型ボーラーを下川町内のビニールハウスに導入し、同(3)で製造したバイオコークスを燃料とする暖房によってトマトやホワイトアスパラなどの生産を行う。

(5)    バイオコークス原料としての可能性を探るため、北海道内、国内、海外におけるバイオマス資源量の調査を行う。
-    たとえば北海道ではビートやクマザサ、稲ワラ、国内ではリンゴかす(青森)・ミカンかす(和歌山)・ススキ(熊本)・マンゴーかす(沖縄・宮古)、海外ではモミガラ(タイ)・ネピアグラス(インドネシア)などが想定される。

※ 上記のほかに、バイオコークス製造装置や小型ボイラーの研究開発、バイオコークス燃焼特性の研究などで、北海道大学(大学院工学研究科)・山形大学などの協力を得る。
※ 2010年4月以降も、下川町内のビニールハウスにおけるバイオコークス活用(効果検証)は、同町の管理運営のもとで継続される予定。

 近畿大学の井田准教授は、今回のプロジェクトについて「最先端技術による、目に見える形での低炭素化技術開発を行いたい」と語っています。
 下川町の安斎保町長は「下川町は昨年、国の環境モデル都市に認定され、森林バイオマスの総合的な活用に取り組んでおり、バイオコークスによる本実証事業が本町を舞台に行われることとなり、環境モデル都市を推進していくうえで大変意義深いものであります」と語っています。
 また、北海道経済産業局環境・リサイクル課の渡辺敏彦課長は「参加メンバー一丸となった取り組みにより、早期実用化を実現し、世界に先駆けたモデル地域となることを期待しています」と語っています。

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注釈

  • ※1 バイオコークス
      別紙「参考資料」を参照。
  • ※2 イタドリ(虎杖)
      タデ科の多年草。都会地の路傍から高山までいたる所に生える。高さ1?余。若芽は食用とされる。根は「虎杖根」として利尿・通経・健胃剤とする。(広辞苑より引用・抜粋)
  • ※3 草本
      木にならない植物の総称。
  • ※4 北海道発・草本資源を利活用した次世代ゼロ・エミ燃料による低炭素社会への実証モデル
      事業主体: 
        管理法人: 近畿大学
        共同実施者: (株)ナニワ炉機研究所、札幌ボデー工業(株)、北海道大学
        協力機関: 東京大学、北海道立工業試験場、下川町
  • ※5 実用大型鋳造炉での石炭コークス11.4%代替成功
    近畿大学は(株)ナニワ炉機研究所の協力を得て2008年4〜7月、(株)豊田自動織機の東知多工場(愛知県半田市)で実証試験を実施。自動車エンジンの鋳造部品を製造するキュポラ炉で、通常燃料である石炭コークスの一部をバイオコークス(茶かすから製造)に替え、長時間連続操業試験下での製造工程への影響を評価。その結果、?石炭コークスを実質11.4%削減できた ?バイオコークス混合による製品製造工程への影響はなかった――ことなどを確認した。

参考資料

090519-2.gif バイオコークスとは (右の図を参照)
  • バイオコークスは、飲料工場から大量に排出・廃棄されている「茶かす」をはじめ、ほぼ全ての光合成由来バイオマスから製造可能で、製鉄・鋳造炉で燃料として使われる石炭コークスの代替となる、新しい固形燃料です。
  • 石炭コークスの課題である化石燃料依存(=天然資源枯渇)や輸入価格変動のリスクを解決する、まったく新しい国産エネルギーとして期待を集めています。
  • また、?原料の100%を活用できる(製造時に新たな廃棄物が出ない=ゼロ・エミッション) ?石炭コークスよりCO2排出量を削減できる(植物由来のため排出量はゼロカウント) ?食糧や飼料を原料として消費せずに済む(ほぼすべての植物由来廃棄物が原料になる)――という利点があります。
  • 石炭コークスの代替だけでなく、家庭用燃料を含む、さまざまな用途に活用できる可能性が高いとみられています。
  • 近畿大学は2008年4月、北海道恵庭市に「近畿大学バイオコークス量産実証実験センター」を開設し、基礎研究と実用炉での実証試験に使うバイオコークスを製造しています。
  • 近畿大学は2008年4〜7月、(株)豊田自動織機の東知多工場(愛知県)で、自動車エンジン部品を製造するキュポラ炉での実証試験を行い、バイオコークスが石炭コークスの11.4%を代替(製品製造工程への影響なし)することを確認しました。
  • 現在、近畿大学では、バイオコークスを開発した理工学部・井田民男准教授のチームが、民間企業と連携しながら、バイオコークス量産機の開発を進めています。また、国内外のさまざまな原料からのバイオコークス製造を模索しているほか、製鉄・鋳鉄工程(石炭コークス代替)以外の用途にも活用できるよう、官民と協力して研究開発を進めています。

近畿大学ホームページ バイオコークス紹介ページ

http://www.kindai.ac.jp/bio-coke/




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