大気・海洋間運動量輸送の高精度モデル構築は
地球温暖化や気候変動予測の精度向上にもつながる。

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地球上の約7割を占める海洋が研究対象

海洋は熱やCO2などの物質の貯蔵庫であり放出源でもあります。したがって海洋と大気の関わりは地球環境、気候システムの変動や変化に非常に重要な役割を果たしていると言えます。また海洋環境や海洋開発を考える上でも、その関係を知ることはこれも重要な過程になります。しかしながら、その詳細なメカニズムは未解明であり、そもそも海洋のことも解っているのはほんのわずかでしかありません。私たちは大気と海洋の間での運動量、熱やCO2の輸送についての詳細なメカニズムの解明を目指して研究に取り組んでいます。

現場観測と室内実験の両輪+モデル計算という独自の研究手法

私たちの研究テーマ自体、今ではあまり行われていない研究のため、研究手法も独自のものとなります。まず現場の海洋観測があって、これには後出の測定器、小型専用ブイ開発に至る深化も伴う。そして台風など危険で観測できない部分を補う海洋シミュレーション装置、これも国内にあまり例のない「風波乱流水槽」を用いた室内実験。加えて人工衛星のデータほか、提供されている色々な既存モデルを活用しての全球データの比較や評価。これら多様なアプローチによって大気・海洋間の運動量輸送メカニズム解明の精度向上を求めているのです。

小型専用ブイ開発を可能にした近大理工学部の総合力

海洋上での乱流計測には時々刻々と変化する風速・風向、潮の流れ、うねり、風波、砕波、気泡生成…など様々な環境の変化が混在して発生し、真の測定値を得ることすら難しくなります。さらに観測塔やブイなどプラットフォーム自体が周囲の風の流れに影響を及ぼしてしまうことさえある。それなら測定器をできるだけ小さなものにして、また揺れの補正もできる、専用のブイや制御のシステムを開発してしまおうと。現在所属する機械工学科ではもちろん物作りもできるし、制御の先生もおられて動揺補正の共同研究も進められる。このように研究装置の開発まで手がけるのもなかなか珍しい例かも知れません。

基礎研究への原動力は身の回りの事象に興味を持つことから

これから研究者を目指す学生の皆さんには最初は何でもいいので、まず興味を持つことから始めて欲しいと思います。私自身もともと海に興味があって、卒業研究のテーマがそのまま現在の研究につながっています。ひとつ研究が進むと、またひとつ知らないことが出て来てそこを調べる意欲が湧いて、また次の研究につながって行く。このように続けて来た現在の研究も、やがて地球温暖化や異常気象の気候再現性を高めることにつながって、災害への対策や海洋開発などに結実するかも知れません。基礎研究の種はそれこそ身の回りにいくつも転がっているのです。

鈴木 直弥
機械工学科 教授

所属: 学科 / 機械工学科 メカニックス系工学専攻 
研究室:
環境流体工学研究室(鈴木研究室)

略歴 2002年 千葉大学環境リモートセンシング研究センター研究生
2003年-2005年 マイアミ大学大気海洋科学部特別研究員
2005年 東海大学開発工学部特別研究員
2005年-2008年 京都大学大学院機械理工学専攻COE研究員
2008年-2012年 近畿大学理工学部機械工学科講師
2012年-2020年 近畿大学理工学部機械工学科准教授
2020年- 近畿大学理工学部機械工学科教授

スポットライト -最先端研究一覧

大気・海洋間運動量輸送の高精度モデル構築は
地球温暖化や気候変動予測の精度向上にもつながる。

近畿大学理工学部 機械工学科 教授
環境流体工学研究室 鈴木 直弥

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