本学協定校のトリア単科大学(ドイツ)へ留学中の瀧本爽香さん(法学部4年生・森山ゼミ)から留学便りが届きました。 2018.04.02

2018.04.02

法学部政策法学科・国際コース4年の瀧本爽香(たきもと さやか)です。
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現在、本学交換留学生としてドイツのトリアに滞在し、Trier University of Applied Sciences(トリア単科大学)にて主にInternational Businessを学んでいます(2017年9月~2018年8月)。
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トリアはドイツ最古の都市と言われており、歴史的な建築物を数多く目にすることができます。Businessを学んでいます(2017年9月~2018年8月)。

また、交通機関もそうした観光資源とリンクさせるかのように整備され、欧州の風土をより身近に感じさせる生活環境が整っています。
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具体的には、ドイツでは、一定の距離であれば、学生は無料でバス・電車を利用することができるのに加え、博物館や美術館も無料であり(もしくは学生割引が適用され)、「文化と共に暮らす」という生活の豊かさについて考える大きな機会となりました。
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International Businessを学修するには学際的な観点も求められ、これまで取り組んできた法的思考はもちろんのこと、社会・思考様式、ひいては言語文化に至るまでのいわゆる「教養(liberal arts)」も肝要となります。このような文化に溢れた環境に身を置くことで、無形と有形とが交錯し、論理と実践とが織りなされる日々を送ることができています。

Trier University of Applied Sciencesには、ヨーロッパやアジアなどから多くの留学生が集まっており、授業は英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語で開講されています。

私自身、ドイツ語の学習も進めつつ、基本、英語開講科目を履修していますが、授業の合間には様々な言語が飛び交うことに最初は驚きを覚えました。
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さらに、思考様式は言語によって形作られるというサピア=ウォーフの考え方ではありませんが、そうした種々の母語数に比例するかのように、授業中はそれぞれがまったく異なった様々な考え方が受講者たちから発信されています。

このような環境に順応し、かつ、生き抜くために最も必要なファクターが「自省」であるということに気付きました。

改善だけでなくこれまでの学びの軌跡で活用できる部分が何であるかを精査し、反証可能性を踏まえつつ再現性を具現化するための最大公約数を自身の経験から追い求め、ひいては、自らのアイデンティティを如何に長所にすべきかを模索するといった思考を辿る作業です。

こうした環境に身を置くからこそ、新しい物事に挑む姿勢について何度も考えることができたのだと今更ながら感じています。

他方、授業特性としては、ディスカッションやプレゼンテーションをする機会が非常に多く設けられています。

当初は、高・低文脈文化の相違を見据えておらず、十分条件を満たすまでには至らない伝え方で苦戦が続きました。また、他の優秀な学生との比較ばかりを行なってしまい、自身の無力さを痛感して涙をこらえる日々も続きました。

しかし、"The longest journey begins with a singe step."という言葉を思い返し、「恥の文化」の相違を乗り越えてまずは明日の一歩を踏み出そう、と一大決心しました。

そのときに重要視したのが「準備」のあり方です。入念な準備を行なうには「想定」を大事にしなければなりません。

これまでは自己発信の一方向的な取り組みばかりでしたが、その前提として「聴講者の趣向・価値観」に軸足を置き、相手の多様なニーズに想いを馳せました。

そして、方向性が定まれば、あとは訓練あるのみです。部屋に帰ってからは、ディスカッションやプレゼンテーションの練習を何度も繰り返し、新しく学んだ語彙・用語は会話で積極的に取り入れるようにしていくうちに、日々、昨日よりも確実に成長している自分を確かめることができるようになりました。

Trier University of Applied Sciencesの先生方についても少し触れたいと思います。

この大学の先生方には、5年以上の企業での実務経験が求められています。したがって、授業で扱うケーススタディの資料やトピックは実務に基づいたもので占められており、論理を実践に昇華させる実学が展開されることで応用力が育まれます。

このときに最も自身を助けてくれたのが、法学部で学んできた法・政治に関する知識であり、専門を持つことの重要性を改めて実感した次第です。

法・政治とビジネスとの密接な関係を再確認すると同時に、それらについての理解がさらに深まり得たからこそ、ディスカッションやディベートなどでも自身の存在意義を発揮することができました。

留学先としてドイツの大学を選択した理由の一つに、ドイツは移民国家であるということが挙げられます。

ドイツと日本はいくつか共通点を持っており、その一つに少子高齢化というキーワードがあります。

ドイツでは、少子高齢化による深刻な労働力不足への解決策として、移民政策を打ち出しました。現在では、ドイツの人口の五人に一人が移民の背景を持っていると言われています。

このような生きた学びが今、目の前に広がっていることを鑑み、帰国後のゼミにおける卒業論文で形にすることを見据えて、今後、ドイツの移民政策の歴史・現状についてさらに研究を続けたいと考えています。

また、4月中にドイツ語のCEF (Common European Framework of Reference for Languages) A1を取得できるように勉強も進めています。

ドイツ滞在中は、英語の運用だけでも日常生活に支障を来してはいませんが、やはり現地の言語を交えてこそ、その母語話者の方々との距離を一気に縮めることができている経験が学習契機となりました。

私が属している法学部国際コースでもマルチリンガリズムが推奨されていますが、実体験を通してその意義を切実に痛感し、学習言語ではなく生活言語であるからこその利点を重んじて取り組んでいる次第です。

グローバル化が進む中で、英語を話す人々が増え、異なる人種間のコミュニケーションは英語がその主たる役割を果たそうとしているのは事実です。

しかしながら、各言語にはそれぞれの社会・思考・文化様式が刻まれており、同じ価値観を共有するには第二言語としての英語だけではその十分条件を満たすことはできません。帰国後はその意義についても、法学部の多くの仲間たちと共有していきたいと考えています。

これまでの留学生活で、たくさんの異なる文化に触れて視野を広げ、また同時に改めて自分を客観的に見つめ直してきました。他の国の文化を理解し受け入れながら、日本人として私が日本の文化を伝えるという経験は、さらにグローバル化が進む社会で生きていく上で非常に重要な経験となると思います。

友人との会話では、それぞれの国の文化や政治についての話題が頻繁に議題に上がります。そうした場面は、新たな好奇心を引き起こすだけでなく、今まで獲得した知識を活用する機会ともなっていて、一つひとつが貴重な体験となっています。また、日本を離れて改めて、日本の素晴らしさを再確認しました。

一方、日本経済への危機感を抱いているのも事実です。この留学生活で得た知識と経験を活かして、卒業後は必ず日本経済・社会への発展に貢献できる人材となる決意を抱いています。

最後となりましたが、この場をお借りしまして、留学前にドイツに関するご指導・ご助言を頂きました黒沢宏和先生にお礼申し上げます。所属ゼミナールの森山智浩先生には言語文化の知識だけでなく常に熱い叱咤激励を頂いていること、改めてお礼申し上げます。そして、どのような時も支え続けてくれている家族、学びの大切さを教えて頂いている法学部・国際コースの先生方、切磋琢磨しながら温かい励ましを送り続けてくれている森山ゼミの仲間たちや友人への感謝の気持ちを忘れず、残りの留学生活もさらに充実したものとなるように精一杯邁進していく所存です。