河田幸視准教授の論文がPopulation Ecology誌に掲載されました
2025.01.21
- 研究
著者
Jurģis Šuba, Yukichika Kawata, Andreas Lindén
論文タイトル
Local population dynamics of gray wolves Canis lupus and Eurasian lynx Lynx lynx exhibit consistency with intraspecific contest competition models
掲載先情報
Population Ecology 67(1), pp. 57-74 (Wiley)
リンク先
https://doi.org/10.1002/1438-390X.12197
論文の内容紹介
本研究は、ラトビア国に生息するハイイロオオカミとユーラシアオオヤマネコの局所個体群の動態が、どちらもコンテスト型になることを、Šuba et al. (2024)で紹介した修正Skellamも用いながら、実証的に示したものです。
この研究では、オオカミやオオヤマネコの種内での資源をめぐる競争が、サイトで発生すると想定し、ある個体がサイトの資源を独占して勝ち残るコンテスト型(C)と、サイトの資源を分けあって共倒れになるスクランブル型(S)の競争を考えました。また、サイトにおける個体の分布がランダムな場合(R)と、集まっている場合(A)を考えました。これらを網羅する形で、Ricker (SR)、修正Skellam (CR)、Hassell (SA)、および Beverton-Holt(CA)モデルを選び、1958~2022年のデータを用いて推定したところ、オオカミとオオヤマネコのどちらでも、コンテスト型モデルの当てはまりがよく、Beverton-Holtモデルが最もよいモデルであることがわかりました。
バルト三国の大型肉食獣の環境容量や内的自然増殖率を推定した既存研究(Balčiauskas & Kawata, 2009; Kawata, 2008)との比較も行いました。過去の2研究では、環境容量は定数とされましたが、ラトビア国のオオカミやオオヤマネコは、変化する生息環境の下で個体群の回復ステージにあることから、本研究では環境容量が経時的に変化するモデルを採用しました。近年のオオカミやオオヤマネコの推定個体数は、Kawata (2008)で推定された環境容量の値を超えつつあり、本研究は現状を反映しつつ、研究を発展させることができました。また、過去の2研究ではオオカミやオオヤマネコの成熟までの期間を考慮してタイムラグが含められていましたが、本研究では、タイムラグを入れるとモデルの当てはまりが悪くなるという、興味深い結果が得られました。
Balčiauskas, L., & Kawata, Y. (2009). Estimation of carrying capacity and growth rate of wolf in Lithuania. Acta Zoologica Lituanica 19(2), 79-84. https://doi.org/10.2478/v10043-009-0018-3
Kawata, Y. (2008). Estimation of carrying capacities of large carnivores in Latvia. Acta Zoologica Lituanica 18(1), 3-9. https://doi.org/10.2478/v10043-008-0001-4
Šuba, J., Kawata, Y., & Lindén, A. (2023). Properties and interpretation of the Skellam model--A discrete-time contest competition population model. Population Ecology 66(2), 115-122. https://doi.org/10.1002/1438-390X.12169