河田幸視准教授の論文が、Population Ecologyに掲載されました

2024.06.21

  • 研究
著者
Jurģis Šuba, Yukichika Kawata, Andreas Lindén

論文タイトル
Properties and interpretation of the Skellam model--A discrete-time contest competition population model

掲載先情報
Population Ecology 66(2) (2024): 115-122 (Wiley)

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論文の内容紹介
 本論文(notes and insights)は、ラトビア国に生息する大型肉食獣の個体群動態についての共同研究から派生したものです。
 個体群生態学で用いられる個体群モデル(LogisticモデルやRickerモデル等)は、個体群の動態を記述するもので、トップダウン的に導入される現象論的(phenomenological)なモデルです。こうした個体群モデルを、個体レベルのモデルからボトムアップ的に導出する試みがあり、first principles derivationと呼ばれています。いま、個体レベルでの資源をめぐる競争がサイトで生じているとします。個体数が増加すると、各サイトでの資源をめぐる競争が高まりますが、その時に、ある個体がサイトの資源を独占して勝ち残るコンテスト型と、サイトの資源を分け合う結果、共倒れになるスクランブル型の競争を考えることができます。こうした競争は、フィールドで観察され、理論モデルでも区別されることがあります。
 個体群モデルを、データを用いて実際に推定する時には、個体レベルでの競争のタイプを考慮することなく、Rickerモデルなどの多用されるモデルを適用する傾向があります。Rickerモデルはスクランブル型であるため、コンテスト型の競争をおこなう個体群への適用には慎重であるべきです。こうした問題意識の下で、私たちは、コンテスト型の個体群モデルであるSkellamモデルに着目しました。個体群モデルの推定をおこなう理由の一つは、資源管理のために、環境容量や内的自然増殖率の推定値を求めることです。そこで、Skellamモデルを、Rickerモデルにおける環境容量と内的自然増殖率で再定式化した修正Skellamモデルを導出し、Rickerモデル(スクランブル型)と修正Skellamモデル(コンテスト型)を用いて推定した環境容量と内的自然増殖率を比較できるようにしました。
 本論文では、上記の問題意識を説明しつつ、修正Skellamモデルの導出の概要や、今後の適用可能性について説明しています。