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最先端研究

近畿大学理工学部のトップランナー いま注目の最先端研究

ゲノム解析で挑む、神経疾患の原因解明。
近畿大学理工学部 生命科学科 准教授
西郷和真

ゲノム医科学 〜本当の幕開け〜

日本で高齢化が進み、それに伴って心臓病、糖尿病などの慢性疾患や認知症、がんなどの高齢発症の疾患の早期診断、治療の重要性が高まっています。

いままでのゲノム医科学・ゲノム医療とは、先天異常や優性遺伝形式あるいは劣性遺伝形式による浸透率の高い疾患における原因遺伝子の解析が中心となってきました。これらの疾患は、発症リスクが高い原因遺伝子の異常を持つ家族内の患者の場合に、ほとんど同じ病気を発症するという特徴を持った疾患です。

一方で、患者のゲノム解析のスピードや費用コスト低下といった進歩があり、ゲノム解析、ゲノム診断の臨床応用が急速に進んでいます。こういった背景から、いままで遺伝子診断の必要がなかった心臓病、糖尿病などの慢性疾患や認知症、がんなどの高齢発症の疾患においても、積極的にゲノム診断やゲノム医療と呼ばれる領域の研究が世界で進んでいます。そして今後も、これらのゲノム情報を応用した医科学研究は、医療の中心となっていく研究領域です。現在、私の研究室でもゲノム情報を解析することで神経疾患の原因解明を中心に、いくつかの遺伝学的プロジェクトを研究しています。

ゲノム医科学における遺伝性難病疾患、神経難病疾患について

私が初めてゲノム医学に興味をもって研究を開始したのは、大学院生時代です。1990年代の当時は、ゲノム科学研究といっても今のようにインターネットのゲノム情報はおろか、論文をコピーして読むにも膨大な手間と時間がかかる時代でした。そこで指導教授から与えられたテーマが、「GADマウスと呼ばれるマウスの神経遺伝病を起こす原因遺伝子をポジショナルクローニング法で解明してほしい」というものでした。

この時に、このマウスの遺伝情報がなく、まず初めに行ったことはゲノム情報を得るためにマウスの交配を沢山行い、自分で遺伝情報を収集するという作業でした。これらの作業を繰り返し行い、忍耐強く情報を集めました。この結果、幸運にも、マウスの遺伝子がUCH-Lと呼ばれるユビキチン・タンパク分解系に関係のある遺伝子であることがわかりました。このユビキチン・プロテアソーム系のタンパク分解は、認知症などの数多くの神経変性疾患に関連する重要なパスウェイであることもわかってきました。

しかし現在、これらの情報はすでにインターネット情報として全世界で公開されていますし、日々更新されています。これらの神経変性疾患の原因遺伝子における研究から、いままで別の疾患と考えられていた疾患でも、遺伝子解析をすると同じ遺伝子の異常という事例も見つかっています。

この例として、私が留学時代に研究したサーカディアンリズム・睡眠障害に関連する“CKIδ遺伝子”と呼ばれる遺伝子があります。この遺伝子は、ゲノムの異常によって、睡眠障害を起こすことが知られていましたが、最近になって、このCKIδ遺伝子の異常が別の疾患である片頭痛を起こすことがわかってきました。このように、遺伝子は働く時期、時間、場所によって、ヒトの生態内で異なった作用を示すことが考えられています。

また、近年認知症などの神経変性疾患や片頭痛疾患においても、原因遺伝子が次々とクローニングされてきました。その結果、ゲノム脳科学は、今まで稀な遺伝性疾患の確定診断から、次世代の医療の中心的な役割を果たす時代へと来ています。

ゲノム医科学・ゲノム医療における遺伝カウンセリング

遺伝子性疾患は、その確定診断のために遺伝子検査を必須とする場合もあります。遺伝子検査および診断については、「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」において、遺伝学的検査・診断を遺伝情報の特性に十分留意し、配慮した上で適切かつ効果的に実施することが定められています。また、遺伝子検査においては分析的妥当性、臨床的妥当性、臨床的有用性が担保された検査法で実施される必要があります。

ゲノム医療は診断をすること、新しい治療法の開発も大切ですが、医療の進歩に伴い患者の不安やニーズも多極化していきます。遺伝性疾患は神経内科や腫瘍分野だけでなく、全ての疾患・病気に関連し、人々の一生を左右していきます。家族性に発症することがあることから、患者本人のみならず、家族、親類においてもその不安は大きく、患者の健康管理のあり方、家族のケアを考えていくことにも重点を置かなくてはなりません。

ゲノム医療の発展に伴い、意図せずとも知りたくない情報が明るみになり、患者やその家族を苦しめることもあるかも知れません。私自身、医師として医療の現場でそんな患者と対面することも少なくありませんでした。急速に進んでいるゲノム医療の現場でその診療を用いる患者自身が取り残されないように、十分な遺伝専門職による遺伝カウンセリングの必要性が唱えられています。

メッセージ

生命科学科では、生命科学、遺伝医学の基礎をしっかりと学んだ後に、最先端研究であるゲノム医科学・ゲノム脳科学を学んでほしいと思っています。この分野は、膨大な情報の中から必要な情報を見つけ出していく作業です。それは砂漠に埋もれたダイヤモンドを探し出すように、途方もない作業かも知れません。しかし、学生の皆さんには、このような研究の中で、失敗を恐れないチャレンジ精神、多少の事では負けない不屈な精神力、忍耐力を身につけてほしいと思っています。また、ゲノム医科学・ゲノム脳科学の知識をもとに、医療、福祉の問題についても一緒に勉強し、ゲノム情報を扱える遺伝専門職の育成にも力を入れていけたらと思っています。

用語説明
遺伝カウンセリングとは
遺伝性疾患のクライアントやその家族に対して、遺伝専門の医師、認定遺伝カウンセラーが説明を行うカウンセリングのこと。遺伝子検査は患者本人だけでなく、家族、親族にも影響がある問題であり、その結果は慎重に取り扱うことが必要とされている。
片頭痛とは
片頭痛とは、頭痛の中でも脳梗塞や脳出血などの疾患の原因がない頭痛の一つ。何らかの原因で頭蓋内外の血管が拡張することにより、血管を取り巻く神経が興奮することが原因と考えられているが、その詳細は不明。近年、睡眠障害、概日リズムと関連するとの報告もある。
神経難病疾患とは
主に原因不明の脳神経が萎縮変性する疾患の総称。最も頻度の多いものはパーキンソン病とされ、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症認知症、多系統萎縮症などがある。またこの中に認知症関連疾患であるアルツハイマー病、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症を含む場合もある。

生命科学科 准教授
西郷和真

所属 学科 / 生命科学科専攻 / 理学専攻
研究室 ゲノム情報神経学
所属学会
日本人類遺伝学会(臨床遺伝専門医、指導医)
日本神経学会(神経内科専門医、指導医)
日本認知症学会(専門医、指導医)
日本頭痛学会(頭痛専門医、指導医、評議員)
日本抗加齢学会(抗加齢専門医)など
略歴
1992年 近畿大学医学部卒業
1993年 国立呉医療センター・後期研修医
1995年 国立精神神経センター神経研究所
2001〜2003年 米国ユタ大学博士研究員
ハワードヒューズ医学財団リサーチアソシエイト
2003年 近畿大学神経内科学講師
2009年 近畿大学院総合理工学研究科講師(兼任)
2015年 近畿大学院総合理工学研究科ゲノム情報神経学准教授
近畿大学医学部附属病院 神経内科・遺伝子診療部(兼任)
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