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KINDAI UNIVERSITY

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最先端研究

近畿大学理工学部のトップランナー いま注目の最先端研究

明日の社会基盤を創造する
~安全・安心、“人と環境にやさしい”をめざして~
近畿大学理工学部 社会環境工学科 教授
東山浩士

複合構造学研究室の社会基盤づくり

~研究のヒントは現場にある~
私の研究室では主に社会基盤構造物の長寿命化に関する研究、橋梁や道路などに供する材料や廃棄物等の有効利用に関する研究など、幅広い研究について多くの企業と共同研究を進めています。と言うのも、私は研究のヒントは現場にあると思っています。それゆえ基礎研究というよりは、すぐに社会や現場で役立つ研究を目標にしているのです。また、社会が高齢化に直面しているように、高度経済成長期に架設された多くの橋梁や社会基盤構造物も高齢化を迎えようとしています。私は国土交通省近畿地方整備局の橋梁ドクター、市町村の長寿命修繕計画策定における学識経験者として、橋梁の現場へ実際に出向き、損傷原因の究明や維持管理計画策定の技術的アドバイス、研修会などを行っています。ときにはゼミの学生とともに補修現場へも出かけます。

現場での橋梁点検・調査

橋梁は河川や鉄道の上、都市内を利用者が安全に通行するための構造物ですが、多くの橋梁技術者がしっかりと点検・管理してその安全を守っているのです。将来このような仕事に多くの学生が携わってくれることを願っています。

研究室から現場へ。最近の研究成果

絶縁材料である碍子

近年に着手した研究のなかで、実用化レベルにまで成果の上がっている内容のひとつを以下に紹介します。
電力関連の絶縁材料として使用されている陶磁器製の碍子(がいし*1)は約40年毎に取り換えられるとともに、落雷による破損や汚れ、製造過程での欠陥品などもあり、これまで産業廃棄物として埋め立て処分されてきました。そこで、佐野正典先生(理工学総合研究所客員教授)と(株)関電L&Aによる碍子の100%リサイクル化を目指した破砕・研磨方法の開発がなされました。

破砕・研磨後のリサイクル碍子は粒径に応じて大粒径はエクステリア材や防犯砂利、中粒径はコンクリートやモルタルなどの建設用材料へ有効利用できますが、リサイクル過程で20%程度排出される碍子微粉末の用途開発が課題となっていました。

使用済み碍子のリサイクル過程

一方、経済活動の発展や都市部への人口集中により、都市部におけるヒートアイランド現象の発生や熱帯夜(夜間の気温が25℃以上)の増加など、社会環境を取り巻く環境の悪化が顕在化しています。これはアスファルト舗装やコンクリートによる地表面の被覆が悪化の原因のひとつであると言われ、現に夏季におけるアスファルト舗装の路面温度は60℃以上に昇り、特にベビーカーの高さ付近での反射熱は人体に最も厳しいとも言われています。また、近年では夏季に猛暑日となる日数が増加傾向にあります。

熱帯夜(最低気温25℃以上)の年間日数
*気象庁のデータを基に作成

猛暑日(最高気温35℃以上)の年間日数

そこで、私は佐野正典先生、(株)関電L&A、東亜道路工業(株)との共同研究に参画し、歩車道環境を改善するために上記碍子微粉末を有効利用する研究に着手しました。具体的には超速硬セメント、碍子微粉末および天然鉱物をブレンドしたミルク状の材料を23%程度の空隙を有するアスファルト舗装に注入する方法です。注入した後の舗装表面はクリーム色になります。私たちはこの製品を「環境対応型路面温度低減舗装」と称しています。これまでに近畿大学34号館屋上、(株)関電L&A敷地内(姫路市飾磨区および姫路市安富町)、国土交通省近畿技術事務所、湖西道路和邇I.C.道の駅「妹子の郷」での試験施工を経て、路面温度低減効果の検証を行ってきました。

湖西道路和邇I.C.道の駅「妹子の郷」試験施工

環境対応型路面温度低減舗装の温度低減効果

ここでは近畿大学34号館屋上にて実施した結果を示しますが、比較対象のポーラスアスファルト(PoAs)舗装が60℃に達した時の環境対応型路面温度低減舗装は40℃を下回り、その温度差は20℃以上です。この成果は一般的な遮熱性舗装(*2)や保水性舗装(*3)(10~15℃低減)と比べても画期的な低減効果と言えます。また、もうひとつの特徴は保水性舗装のように散水する必要がなく、無散水状態でも低減効果が20℃程度を期待できることです。現在は公園内や観光施設での活用を期待して、この境対応型路面温度低減舗装に着色を行い、景観を主とした注入材の研究開発を進めているところです。

使用済み碍子のリサイクル技術に関するこれまでの研究成果により、平成27年10月には(一社)産業環境管理協会「平成27年度資源循環技術・システム表彰」経済産業省産業技術環境局長賞を受賞しました。また、国土交通省近畿技術事務所にて開催された「ふれあい土木2014研究室対抗関西土木リーグ」のポスター発表では、研究当時にゼミの学生であった浦郷智樹君が奨励賞を受賞しました。この場を借りて、関係各位に感謝を申し上げさせて頂きます。

経済産業省産業技術環境局長賞受賞

浦郷智樹君のポスター発表・奨励賞受賞

社会基盤づくりの世界へ

〜多くのメンターに恵まれて〜
私が近畿大学を志望したのは、高校の3年間「物理」を教わった柘植宗隆先生(近畿大学出身)の親身なご指導によるところが大きかったと思います。また、多くの専攻分野から土木工学の道へ進むことを決めたのは、これは大工をしていた祖父の影響です。そうして近畿大学に入学し、土木工学に関する専門科目を学ぶのはとても興味深く、すべてが新鮮であったことを記憶しています。4年生の卒業研究では指導教員の栁下文夫先生から「外ケーブル方式による合成桁の補強に関する実験と解析」についてご指導を頂きました。その後、大阪大学大学院へ進学し、修士論文および博士論文は卒業研究のテーマを引き続き発展させ、松井繁之先生から実践的かつ寛大なご指導を仰ぎ、研究者の世界へと導いて頂きました。博士号取得後は母校の近畿大学に着任し、これまで17年間の奉職をさせて頂いています。その間、大学院生当時に知り合ったN. Banthia先生(カナダ・ブリティッシュコロンビア大学)の研究室にて客員研究員(近畿大学在外研究)として1年間滞在しました。この経験は世界へと視野を広げる大きなきっかけとなりました。
こうして我が来し方を振り返り、私はこれまでの研究者人生を方向付けて頂いた多くのメンター(指導者)に感謝しています。そんな想いを込めて、みなさんには学生時代に是非とも読んでもらいたい書物をここに紹介します。サミュエル・スマイルズ著「自助論(Self-Help)」です。この本には「よき師、よき友は人生最大の宝」とあります。私自身が大切にしている言葉です。学生諸君には大学時代に多くのよき師、よき友と出会うようにして欲しいと思います。

メッセージ

私の研究分野は人々の社会生活を支える社会基盤構造物(道路、橋梁)に関する研究が多く、主に実験を行っています。ご指導を仰いだ松井繁之先生からは、実験や現場では五感を利かし、実物をよく観察し、直に触れることが大切であることを教わりました。これからも人と環境にやさしい、安全・安心な社会基盤構造物の研究に研鑽するとともに、後輩の育成に励んでいきたいと思います。
後輩に伝えたいことは、時間を大切にし、思いやりと感謝を忘れないこと、あれやこれやと思い悩む前にまず行動することです。それと、適度なストレスを感じる仕事に挑戦することです。それらはきっと、みなさんにとっての成長の糧となることでしょう。

用語説明
*1 碍子(がいし)とは
碍子とは、電線と支柱の絶縁を目的とした陶磁器製の器具のことである。
*2 遮熱性舗装(しゃねつせいほそう)とは
遮熱性舗装とは、遮熱材料を用いて近赤外線を高効率で反射させて路面温度上昇を抑制する舗装技術である。
*3 保水性舗装(ほすいせいほそう)とは
保水性舗装とは、舗装体内に水分を保水させて水分の気化熱により路面温度上昇を抑制する舗装技術である。

社会環境工学科 教授
東山浩士

所属 学科 / 社会環境工学科専攻 / 環境系工学専攻
研究室 複合構造学研究室
略歴
1990年 私立高田高等学校 卒業
1994年 近畿大学 理工学部 土木工学科 卒業
1996年 大阪大学大学院 工学研究科 博士前期課程 土木工学専攻 修了
1999年 大阪大学大学院 工学研究科 博士後期課程 土木工学専攻 修了
博士(工学)取得
1999年 近畿大学 理工学部 土木工学科 助手
2002年 近畿大学 理工学部 社会環境工学科 講師
2005年 ブリティッシュコロンビア大学 客員研究員(1年間)
2010年 近畿大学 理工学部 社会環境工学科 准教授
2016年 近畿大学 理工学部 社会環境工学科 教授
受賞
1994年3月 近畿大学総長賞
2007年11月 第27回日本道路会議 論文奨励賞
「アスファルト舗装発生材からリサイクルした骨材を用いたコンクリートの強度特性」
2014年10月 (一財)災害科学研究所 平成26年度優秀研究賞
「鋼・コンクリート合成床版に適用する高耐久性スタッドの開発」
2015年10月 (一社)産業環境管理協会 平成27年度資源循環技術・システム表彰
経済産業省産業技術環境局長賞「使用済碍子の有効利用技術の開発」
最先端研究一覧

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