近畿大学と(株)ルミカ、抗がん剤調製トレーニングキットの利便性を大幅に向上
近畿大学と(株)ルミカ、抗がん剤調製トレーニングキットの利便性を大幅に向上
新開発の高輝度発光液を利用、試作品を6月30日(水)から公開
近畿大学(本部:大阪府東大阪市、学長:畑博行)と、長年にわたり化学発光製品を開発、販売してきた株式会社ルミカ(本社:福岡県古賀市、代表取締役社長:原田士郎、URL:http://www.lumica.co.jp/、以下:ルミカ)は、薬剤調製現場での抗がん剤による被ばくリスクを軽減するために効果的なトレーニングキットの開発を共同で進めていますが、このほど、新たに開発した特殊な発光液を用いることで、既存の同種製品より利便性と、薬液飛散状況の検出感度を大幅に改善できる技術を開発し、特許出願を済ませました。
この研究開発は、近畿大学薬学部の石渡俊二講師・多賀淳講師を中心とするチームとルミカが共同で、2009年6月から進めているものです。
近畿大学とルミカはすでに、この技術を用いた抗がん剤調製トレーニングキット「LUPHTEK(ルフテック)」の試作品(サンプル版)を開発し、近畿大学薬学部の学生実習で使用しています。LUPHTEKサンプル版は、2010年6月30日(水)から3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「第23回インターフェックスジャパン」(http://www.interphex.jp/)で、ルミカのブース(東展示棟6‐7)にて展示されます。
技術開発の背景
- 抗がん剤調製トレーニングキットは、注射剤の混合調製の際、発がん性をもった抗がん剤の飛散によって起こる、薬剤師など医薬従事者の被ばくリスクを軽減するため、模擬薬液を使った調製訓練によって飛散状況を把握し、安全な調製技術の習得を助けるためのものです。
- 既存のキットは、ブラックライト(紫外線)照射によって模擬薬液(蛍光液)が蛍光を出すことで薬液飛散状況を検出しますが、ブラックライト関連設備のコストがかかるほか、ブラックライトを照射した範囲しか検出できない(一度に広範囲から検出できない)、などの制約があります。
技術開発のポイントと優位性
- 今回、近畿大学とルミカは、模擬薬液に蛍光液を使用せず、新たに開発した発光液を使用しました。これは、非常に高い輝度を持ち、周囲を暗くするだけで液体自体が発光するものです。ただ、そのままでは粘度が高いため、特定の溶媒を用いて希釈することで粘度を水に近づけ、通常の混合調剤と違和感のない操作性を実現しました。 この結果、既存のキットにはない、以下の特長を備えることができました。
- (1) ブラックライトなどの設備や機材を必要としない(室内を暗くするだけでよい)。
(2) 高輝度かつ長時間にわたり発光するため、微量な液の飛散でも見つけることができる。
(3) 広範囲を一度に検出できるため、予想外の場所への飛散も見つけることができる。 - 以上の特長から、経済性と利便性にすぐれ、トレーニング効果も高いと考えています。LUPHTEKサンプル版は、2009年11月から近畿大学薬学部の学生実習で使用され、学生と教員の双方から高い評価を受けています。
今後の方向性
- 近畿大学とルミカでは今後、製品化・上市へ向け、さらなる研究開発に取り組み、医薬関係者のニーズの把握も進めながら、LUPHTEKサンプル版の機能改善を図っていく予定です。
<参考資料>
抗がん剤調製トレーニングキットが必要とされる事情について
- 日本では現在、年間30万人以上が、がんで死亡しています。その割合は全死亡者の約30%に達しています。がん治療に用いられる抗がん剤は、がんの進行を抑えるのに有用な薬ですが、その反面、副作用ももっています。例えば、吐き気や脱毛をおこすものがあることはよく知られていますが、さらに、新たにがんを発生させる発がん性や、次世代に奇形を起こす催奇形性をもっているものもあります。通常は、治療によって得られる利益がこれらの副作用によってもたらされる不利益より大きいと考えられるため、治療に抗がん剤が用いられます。
- 抗がん剤による治療では、使われる抗がん剤の種類や量が患者によって異なり、多くの場合、複数の抗がん剤を組み合わせて使用します。そのため、患者に合わせて抗がん剤を混合(調製)する必要があります。抗がん剤の多くは消化管から吸収されにくいため、液体の注射薬として投与されることが多く、溶液を混合して注射剤を調製することになります。
- この混合作業は薬剤師、看護師などが行います。作業中には、抗がん剤が液滴となって飛散し、皮膚などに付着する危険性があるため、薬剤師・看護師などが発がん性や催奇形性などのリスクにさらされることになります。
- そこで、抗がん剤の混合を行う際は、事前に、混合作業中に液を飛散させないトレーニングを行っておくことが重要となります。しかし、実際の抗がん剤を使って練習を行うことは安全面から難しいため、模擬薬液を用いたトレーニングが必要とされています。
参考写真(LUPHTEKサンプル版を用いた調製トレーニング)
