法学部で学ぶ
答案の書き方
1.出題の意図
試験では、出題者の意図を正確に把握することが、きわめて重要です。何のためにこの問題を出したのか、 どのような論点についてどのような論述を求めているのか、その動機ないし意図を出題者の立場に立って考えることができれば、 論点の設定、順序立て、重点の配分等が容易になり、いわば半分出来たようなものです。 問題の趣旨をとり違えたり、問うていないことについての冗長かつ独善的な論旨を進めることは、たとえその内容自体は面白く、 問題を変更すれば優秀な解答と見られるようなものであっても、答案としては失敗作といわざるをえません。
2.論点の配列、表現、詳しさ
法律の問題の多くには複数の論点が含まれています。特に事例形式をとる論文試験においては、
出題者の想定する論点をうまく捉えることが、一つ一つの論点についての結論以上に重要な場合が少なくありません。
例えば、A、B、C、Dの四つの論点について3、3、2、2くらいの比重で書くことが期待されている場合、
Aについて無茶苦茶に詳しく論述し、A6、B4、C0、D0となっていれば、たとえAの内容が抜群によく出来ていて、
Bもかなりよかったとしても、「試験の答案」としては、C、Dも含めて全体をバランスよく書いたものに及ばないことがあります。
潜在的能力を見つけたり異色ある人材を探す目的のテストであれば、どこかに見所があれば大きな欠陥があっても評価されることがありますが、
多数の受験生について機械的な公平さで採点される場合には不利です。
一つの答案の中の論述は、全体としての流れに注意し、相互に矛盾がないように構成しなければなりません。
特に、主語と述語との対応関係、内容の一貫性に配慮して下さい。
論旨展開の順序については、できれば書き始める前におよその構成を考えておいた方がよいでしょう。
論文形式の答案には適切かつ簡潔な導入部が必要な場合が多いと思われますが、前置きが長くなり過ぎないように注意して下さい。
答案作成にかける時間や書く分量は、本来は自由ですが、与えられた枠の7、8割程度を目安としておくとよいでしょう。
時間的には、1時間あれば実際に書く時間は40〜45分程度の見当です。
はじめの5分ないし10分は、出題の意図を考え、だいたいの構想を立てるのに使って下さい。
また、時間内に書き終えて自分で読み直し推敲する余裕がほしいものです。分量的にも、与えられたスペースの7、8割程度を目標にするのがよいでしょう。
半分以下ならば、何か重要な論点を見落としていないか、叙述が簡単すぎなかったかを反省してみる必要があります。
用紙が足りないと感じたら、何か不用なことを書こうとしているのではないか、冗長すぎるのではないか、と一度は考えてみて下さい。
もっとも、時間も用紙もいっぱいに使った優秀な答案には敬意を表せざるをえません。
3.法令・判例及び学説の扱い方
実定法の諸科目においては、法令や判例の処理のしかたも重要です。論点に関連のある法条をどう引用するかは実力の一部です。
展開した論旨が直接にある条文に根拠を有している場合、その場所に()つきで引くのが普通です。
普及している略語、(民、商、民訴、自賠等)は用いてもよいけれど、本文中ではなるべく正確な名称を用いて下さい。
ただし、条文の文言を丸暗記してそのままの形で全文引用することは、
それがその答案中でよほど重要な意味をもつ場合をのぞいては避けた方がよいでしょう。
多くの問題において、重要判例の動向を知っているのと知らないのとでは、決定的な差異を生じます。
ただ、ある一つの判決があるというだけでは、当然に「判例」とよんでよいかどうか疑問の場合もあります。
判例に反対し、これと異なる立場で論述しようとする場合には、判例に言及し、知識としては判例を知っていることを明示しておいた方がよいでしょう。
学説に関しても、うかつに「通説は……」などと書いて、それが誤っていれば、たちどころに見破られてしまいます。
ふだんから、どのような説が通説で何が少数説か、どのような理由で説が岐れているか等に注意しながら勉強してほしいものです。
通説で納得がいかない場合に、自分が理解しやすい少数説にそって論旨を展開することは差し支えありませんが、
その場合には、通説について知っていることを答案中に明示し、また自説の根拠をはっきりと示して下さい。
出題者(採点者)の見解にも、必ずしも迎合する必要はありませんが、自説についての理由付けを特に念入りにしておくのがよいでしょう。
4.文章、用語法
蛇足になりますが、文章や用語法に注意すべきことは、「論文の書き方」 で指摘した通りです。 法律学の答案では、必ずしも名文である必要はありませんが、何を言おうとしているのか、書き手の意思が読み手に誤りなく伝えられなければなりません。 専門用語の使用には特に高度の注意が要求されます。誤字、脱字は絶対にないように(そのためにも推敲の時間がほしい)! 当時者相方(→当事者双方)、適(摘、滴)出子(→嫡出子)、心身喪失の状況(→心神喪失の常況)など論外です。

