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答案の書き方(特に法律系科目)

1.法律学の答案を書く前に知っておくべき前提

i.紛争の法的解決

人が共同生活を営んでいる社会においては、様々な紛争が生じており、その解決には、紛争の生じる前にあらかじめルールを定めておくことが有用です。しかし、「あらかじめルールを定めておくことで紛争を解決する」といっても、実は簡単なことではありません。少し専門的な言い回しを用いると、紛争に対して適用されるべき法を発見し、その内容を確定する作業(「法の解釈」という)とともに、紛争の中で生じている具体的事実を確定し、その事実に対してその法を当てはめるという作業(「法の適用」という)が必要になります。これらの作業は、専門的な知識と技術を必要とするものであって、だからこそ「法(律)学」という学問分野が成立し、それを研究・教育するための「法学部」という学部が存在しているといえます。
ここでは、具体的な事例を用いながら、法の適用がどのような手順でなされるのかを説明することにします。

ii.法の適用−事例の設定

あらかじ定められているルール(法)を、現実に生じている紛争に「適用」するということは、逆から言えば、現実に生じている紛争の中にある具体的事実を、あらかじめ定められているルール(法)にあてはめるという作業をすることです。ここでは、ルールについての話と、事実についての話をしっかり区別した上で、ルールと事実とを上手に接合することが必要です。
たとえば、家族間で見たいTV のチャンネル争いをするというのは、通常は法が対処する社会的紛争ではありませんが、しかし、それが高じて相手にケガをさせるようなことになれば、法の出番となります。そこで、たとえば、兄弟であるA とB が、テレビで何を見るかをめぐってチャンネル争いをしている際に、A がB を突き飛ばし、B がテーブルの角に頭をぶつけてタンコブを作ったというケースを考えてみましょう。

iii.法の適用①:ルール

① 要件−効果の枠組みへの整理

まずは、こうしたケースに適用されるルールを、紛争に適用するための形に整理する必要があります。
刑法204条は、傷害罪として、「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定めています。この条文が本件には適用されそうです。
法は「要件−効果」という形に整理して読むことが必要です。この条文から「要件」、つまり何をすると傷害罪が成立するかを読み取ると、①ある者がその行為によって、②他人の身体に、③傷害を負わせた、という要件を取り出すことができます。このほかにも、④行為者に故意があることという要件も存在します。「故意」が刑法204 条の条文に現れないのは、殺人罪や窃盗罪や詐欺罪といった他の犯罪でも共通する要件であるため、刑法第一編の総則で規定されているからです(刑法38条は「罪を犯す意思」として故意を定義しています)。
次に、「効果」、つまり傷害罪が成立するとどのような法的結論が導かれるかについては、「15年以下の懲役か、50万円以下の罰金刑かの、いずれかが科せられる」という定めがあるものと読み取れます。

② ルールの特徴:一般性・抽象性

ここで、こうしたルールに見られる特徴を説明します。それは一般性あるいは抽象性とよばれる特徴です。「一般」の対義語は、「特殊・特別・特定」、「抽象」の対義語は「具体」です。ルールというものが一般性・抽象性という特徴をもっていることの意味は、ルールは、特定の具体的事件にだけ適用されるものではないということです。
今ここでは、Aという特定の人が、Bという特定の人の身体を、テレビのチャンネル争いという特定の状況の下で、突き飛ばしてテーブルの角に頭をぶつけさせるという特定の方法でケガをさせたという場合を考えています。しかし、刑法204 条が定めるルールは、そうした特定の人・状況・方法だけを念頭においているのではありません。一般的・抽象的に「ある者が他人の身体に傷害を負わせた」場合について定めているのです。そのため、A ではなくてC の行為であってもその対象になるし、突き飛ばしたではなくてゲンコツで殴った場合もその対象になります。
法律を学び始めた学生のレポートや答案を見ていると、たとえば「傷害罪の要件は、AがBの身体を傷害することである」などと記述しているものにしばしば出会います。しかし、要件という法的ルールは、一般的・抽象的なものであるはずであるから、それを説明するときに、AとかBといった特定の人を挙げるのはおかしいです。これでは、一般的・抽象的な「ルール」の話と、特定的・具体的な「事実」の話を混同していることに

iv.法の適用②:事実

ルールを「要件−効果」という形に整理したら、次に事実の確定という問題に取り組むことにしましょう。

① 要件に当てはまる事実の抽出

事実を確定するといっても、それは実際に起きたことをすべて記述するという意味ではありません。ルールの要件に当てはまる事実に絞って、そのような事実が本当にあったのかなかったのかを確定することを意味します。ここで取り上げている例であれば、「①ある者がその行為によって、②他人の身体に、③傷害を負わせた」という要件を満たすような事実(AがBを突き飛ばして、Bにケガをさせた)が本当に存在するか確定するということです。これに対して、そのときAが赤い色のシャツを着ていたとか、Bが見たかったのはアニメだったとかいったことは、たとえそれが事実だとしても、法的紛争を解決するために関係のない事実といえます)。
試験問題などでは、どのような事実があったかということは、文章として書かれています。試験問題の場合、事実が確定されていることを前提として、そうした記述の中から、要件に当てはまる事実を適切に抜き出す作業が必要になります。上の例であれば、①の要件との関係では、「AがBを突き飛ばしたこと」が、②要件との関係では「Bの頭に」タンコブができていることが、③要件との関係ではBが「タンコブを作るというケガをしたこと」が、それぞれ要件に当てはまる事実として抽出されます。

② 裁判官の場合:証拠による事実の認定

しかし、実際に裁判官が裁判を行うときには、事件の現場にいたわけではないので、もう少し別の作業が必要になります。そもそも、事件現場にいた人であっても、見落としたり、勘違いしたりという可能性があるので、どのような事実があったかは、本当のところは神のみぞ知ることかもしれません。しかし、「事実は分からない」では裁判をすることができません。どのような事実があったのかを裁判の場で確定するために、裁判官は証拠に基づいて事実を認定するという作業を行います。逆に、裁判官は原則として、証拠もないのにある事実があったなどと勝手に決めつけることはできません。これを証拠裁判主義といいます。民事訴訟法247条、刑事訴訟法317条が定める近代法の重要な原則です。もっとも、民事訴訟法には自白(民事訴訟法179 条)という例外があります。
証拠は、様々な形で裁判所に提出されます。ここで取り上げている例であれば、「AがBを突き飛ばすところを見た」と家族が証言をしたり、Bの頭にできたタンコブの写真が提出されたり、Bを治療した医師の作成した診断書が提出されたりすることで、「AがBを突き飛ばし、Bの頭に、タンコブというケガを負わせた」という事実を認定することになるでしょう。
もしも証拠がなかったら(あるいは不十分であったら)、主張されている事実は存在しなかったものと扱います。事実が存在しないという証拠がある場合だけでなく、事実が存在するという証拠がない場合にも、事実が存在しなかったものと扱う点には注意が必要です。

v.法の適用③:当てはめ

以上見てきたように、ルールを「要件- 効果」の形に整理して、その要件を満たす事実を事件の中から見つけ出せれば、作業はほぼ終わったも同然です。あとは、どの要件をどの事実によって満たしたことになるのかをきちんと確認し、すべての要件が満たされたことを確認すれば「効果が発生する」という結論を示すことになりますし、1つでも要件を満たさなければ「効果が発生しない」という結論を示すことになります。
上の事例では、事実として「① AがBを突き飛ばしたことで、② Bの頭に、③タンコブができた」ということが確認できているので、これによって、傷害罪の要件である「①ある者がその行為によって、②他人の身体に、③傷害を負わせた」ことを満たすといえるので、傷害罪の効果として定められている「15年以下の懲役刑又は50万円以下の罰金刑」という刑罰を科すことが可能になるという結論が導かれます。

vi.法的三段論法という形式

このように、ルールに事実を当てはめて結論を導くという論理関係を、「法的三段論法」と呼んでいます。
「三段論法」というのは、論理学における推論の形式の一つです。「AならばBである」という文が正しく、「CはAの一部をなしている」という文が正しいときには、「CはBである」という文も正しいという推論形式です。このとき、3つの文を順に「大前提」「小前提」「結論」といいます。有名な具体例は、次のようなものです。
大前提:人であれば、いつか死ぬ。
小前提:ソクラテスは、人である。
結論:ソクラテスは、いつか死ぬ。
法的三段論法は、「大前提」で要件- 効果の形に整理した法的ルールを、「小前提」である事実が要件を満たすということ(当てはめ)を、そして「結論」で効果の発生を記述しています。
この記述の方法をとれば、ある事件を前にして、「懲役刑を科す」とか「賠償を命じる」とかいった結論を出すにあたり、それが法的ルールに基づくものであること(したがって、その結論を出す人の気分・感情や、利害損得・恣意などから導かれたものではないこと)を保障できます。法的三段論法という形式をとった「法の適用」という手法は、裁判をはじめとする法的解決が、公正なものであることを保障しようとするための工夫です。

答案の書き方

以上の事を前提に、法律科目の答案の書き方についてのポイントを紹介していきます。

i.記述式試験のねらい

法学部の授業で筆記試験を行うのは、基礎的な学識と法的思考力が身に付いているかどうかを確認するためといえます。基礎的な学識と法的思考力は、文字通り基本的なことだけに、広い応用の可能性があります。「汎用性」という言葉がよく使われますが、知識と思考力が汎用的であることはとても重要なことです。法律学に限らず、およそ学問を習得するにあたっては、基本を確実におさえること、すなわち、汎用性のある知識と思考力を身に付けることが必要不可欠です。
試験の出題者のねらいは、基礎的な学識と法的思考力がきちんと身に付いているかどうかを確認することにあります。その際に、特に事例問題が好まれるのは、法律専門家が実際に直面する場面に比較的近い具体的事例を素材とすることが、基礎的な法的学識と法的思考力が本当に身に付いているかどうかを判定するのに適していると考えられるからです。とはいえ、基本的な最高裁判例の事案そのものや、どの教科書にも出てくる設例を出題すると、表面的に記憶していただけでも一応の合格水準の答案が書けることになってしまいます。そこで、出題者は、そのようなことを避けるため、事例を少し変化させたり、複数の設例を組み合わせたりすることにより、問題に「ひねり」を加えます。これにきちんと対応できるかどうかで、学んだことが本当に身に付いているかどうか、実際に使える知識になっているかどうかを試すことができます。
答案を書く側からすれば、この「ひねり」に対応するためには、普段から記憶に頼って覚え込むような勉強をするのではなく、理解して身に付けるような勉強をすることが必要です。一夜漬けの詰め込みでは、「ひねり」の前に直ちに馬脚をあらわすことになってしまいます。そのためには、普段から、消極的に受容する態度でただ記憶するという勉強法をとるのでなく、何かを読んだり聞いたりしたときに、「それじゃあ、もし事実を変化させて、こういうときだったら、どういう結論になるだろうか」と常に自問自答しながら勉強を進める必要があります。そうした日々の積み重ねが、真の法的思考力の習得につながります。

ii.論点の重要性

試験では、まず問題として論じられるべきポイント、つまり論点を正確に把握することが、きわめて重要です。何のためにこの問題を出したのか、どのような論点についてどのような論述を求めているのか、が分かれば、問題となりうる論点の設定、答案の順序立て、重点の配分等が容易になり、いわば半分以上出来たようなものです。問題の趣旨をとり違えたり、問うていないことについての冗長かつ独善的な論旨を進めることは、たとえその内容自体は面白く、問題を変更すれば優秀な解答と見られるようなものであっても、答案としては失敗作といわざるをえません。
この論点の抽出は、法律家にとり最も重要な基礎的な能力の一つです。法律の条文や法律の理論はすべて、何らかの問題(論点)に対する解決を示したものであるので、問題を見抜くところからすべては出発します。まさに「はじめに問題ありき」なのです。論点を見抜けないということは、法律家の基本的資質に欠けているということを意味します。

iii.論点の比重(検討の順序、表現、詳しさ)

法律の問題の多くには複数の論点が含まれています。特に事例形式をとる論文試験においては、出題者の想定する論点をうまく捉えることが、一つ一つの論点についての結論以上に重要な場合が少なくありません。例えば、A、B、C、D の四つの論点について3、3、2、2くらいの比重で書くことが期待されている場合、Aについて無茶苦茶に詳しく論述し、A6、B4、C0、D0となっていれば、たとえA の内容が抜群によく出来ていて、Bもかなりよかったとしても、「試験の答案」としては、C、Dも含めて全体をバランスよく書いたものに及ばないことがあります。潜在的能力を見つけたり異色ある人材を探す目的のテストであれば、どこかに見所があれば大きな欠陥があっても評価されることがありますが、多数の受験生について機械的な公平さで採点される場合には不利です。
一つの答案の中の論述は、全体としての流れに注意し、相互に矛盾がないように構成しなければなりません。特に、主語と述語との対応関係、内容の一貫性に配慮して下さい。論旨展開の順序については、できれば書き始める前におよその構成を考えておいた方がよいでしょう。論文形式の答案には適切かつ簡潔な導入部が必要な場合が多いと思われますが、前置きが長くなり過ぎないように注意して下さい。
答案作成にかける時間や書く分量は、本来は自由ですが、与えられた枠の7、8割程度を目安としておくとよいでしょう。時間的には、1時間あれば実際に書く時間は40〜45分程度の見当です。はじめの5分ないし10分は、出題の意図や論点を考え、答案の構成を組み立てるのに使って下さい。また、時間内に書き終えて自分で読み直し推敲する余裕がほしいものです。分量的にも、与えられたスペースの7、8割程度を目標にするのがよいでしょう。半分以下ならば、何か重要な論点を見落としていないか、叙述が簡単すぎなかったかを反省してみる必要があります。用紙が足りないと感じたら、何か不用なことを書こうとしているのではないか、冗長すぎるのではないか、と一度は考えてみて下さい。もっとも、時間も用紙もいっぱいに使った優秀な答案には敬意を表せざるをえません。

iv.法令・判例及び学説の扱い方

実定法の科目においては、法令や判例の処理のしかたも重要です。論点に関連のある法条をどう引用するかは実力の一部です。展開した論旨が直接にある条文に根拠を有している場合、その場所に( )つきで引くのが普通です。普及している略語、(民、商、民訴、自賠等)は用いてもよいけれど、本文中ではなるべく正確な名称を用いて下さい。ただし、条文の文言を丸暗記してそのままの形で全文引用することは、それがその答案中でよほど重要な意味をもつ場合をのぞいては避けた方がよいでしょう。
多くの問題において、重要判例の動向を知っているのと知らないのとでは、決定的な差異を生じます。ただ、ある一つの判決があるというだけでは、当然に「判例」とよんでよいかどうか疑問の場合もあります。判例に反対し、これと異なる立場で論述しようとする場合には、判例に言及し、知識としては判例を知っていることを明示しておいた方がよいでしょう。
学説に関しても、うかつに「通説は……」などと書いて、それが誤っていれば、たちどころに見破られてしまいます。ふだんから、どのような説が通説で何が少数説か、どのような理由で説が岐れているか等に注意しながら勉強してほしいものです。通説で納得がいかない場合に、自分が理解しやすい少数説にそって論旨を展開することは差し支えありませんが、その場合には、通説について知っていることを答案中に明示し、また自説の根拠をはっきりと示して下さい。出題者(採点者)の見解にも、必ずしも迎合する必要はありませんが、自説についての理由付けを特に念入りにしておくのがよいでしょう。

v.文章、用語法

蛇足になりますが、文章や用語法に注意すべきことは、「論文の書き方」で指摘した通りです。法律学の答案では、必ずしも名文である必要はありませんが、何を言おうとしているのか、書き手の意思が読み手に誤りなく伝えられなければなりません。専門用語の使用には特に高度の注意が要求されます。誤字、脱字は絶対にないように(そのためにも推敲の時間がほしい)!「当時者相方」(→正しくは「当事者双方」)、「適(摘、滴)出子」(→正しくは「嫡出子」)、心身喪失の状況(→正しくは「心神喪失の常況」)など論外です。他にも、法の「適用」という言葉を、「適応」と間違って憶えてしまう学生が少なくありません。「適用」が「当てはめること」「ルールを用いること」であるのに対して、「適応」は「あてはまること」「周りの状況に合わせること」という意味で、全く違うものなので注意してください。
また、法律に関する文章は一般的な文章と異なり、論理的でなければならない、難解な表現が出てくる、長文になりやすい(裁判所の判決を見るとイメージしやすいでしょう)という特徴があります。そのため、読み手にとって印象がよい答案というのは、論理がしっかり通っており、分かりやすく論述されており、簡潔な表現を用いている答案といえます。
以下では、そのような答案を書くためのルールを示しておきます。
①文を書くときはできるだけ単文かつ短文を心がける!単文とは、(たとえば、「甲は乙に対して100万円を請求した」というような主語と述語が一対だけの文のこと)。
②主語はしゅご~く大事!(主語は、落とさず、短く、早めに出す)
③「の」の多用を避ける!(「の」には様々な意味があり、あまり多いと意味が分からなくなります。連続して使用するのは最大で2 つまでにとどめるとよいでしょう)
④理由づけと結論は必ずセットで!一つの結論につき理由は二つ以上、小さい論点(前提となる論点で触れる必要はあるがあっさりで足りるもの)でも最低一つは書く!その際の理由づけは、必要性(そう解する必要がある)と許容性(そう解しても問題ない)を意識して書けると文章の説得力が増します。

vi.悪い答案の例

以上、答案の書き方を示してきましたが、最後に悪い答案の例も挙げておきます(人は成功からより失敗から多くを学びます)。
まず、ほとんど文字を書いていないのは論外です(点数のつけようがありません)。また、これも非常に多いですが、結論だけ書いていて、その理由が全くない答案です。
他にも、なぜその論点がこの問題で出てくるのかの説明がまったくない答案(ぶつ切り論証)、条文や論点の知識があやふやであるor ウソを書いている答案、当てはめが全くない答案(一般論としては規範を示しているが、本問でどのような結論になるかの筋道が全く触れられていない)、問題文又は問題提起に対応する結論を示していない(論理一貫性がない答案として評価されません)など、要するに、上述した法的三段論法ができておらず、説得力を欠く答案は悪い答案といえます。
皆さんには、以上の点を大いに参考にしてもらって、試験でこのような答案を書くことがないことを祈っています。

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