2008(平成20)年度 海外留学帰国報告書

カリフォルニア大学デイビス校(アメリカ) 経済学部 国際経済学科 帰国報告書

留学が終わって思うことは、自分はこの機会に恵まれて本当にラッキーだったということです。いくらテストの点数が良くても、ただ自分が留学したいと思うだけでは何も起きませんでした。親を含め、周りのサポートがあってこそ自分が生かされるということを、しみじみと感じました。この1年間は感謝の1年でした。日本に帰ってきてから、どうやって親に恩返しをしようかと考えますが、学生の自分ができることなど大概知れていて、行き着くのは、ただ自分の道をまっすぐに突き進む事だということです。それが一番の近道になるわけで、何も心に決めないまま、ただうろうろと迷っているのは、時間の無駄です。デイビスではなくて、もちろん違う道を選ぶこともできましたが、この道を最後までたどってみて、後悔などないどころか、満足感で満ちています。道の途中で自分がどこを目指しているのか、自分が今どこにいるのか迷うこともあって、決めた道に不安もありましたが、今ここにある自分に後悔はありません。

1.留学中の活動

最初の1ヶ月間くらいは全くアメリカで授業を受けているという感じがしなかったのが本音です。たぶん、デイビスではどこに行っても意外とアジア系のアメリカ人が多いことと、あと、日本に居る時からネイティブの英語を聞くことに慣れていたので、アメリカで生活することに特に苦労しなかった、ということが理由にあると思います。語学センターや、英語村にしょっちゅう行っていたので、英語を話すことに躊躇いや怖さなどは最初からありませんでした。今考えると、近大には英語を勉強したい人にとって、すばらしい施設が整っていると思います。その後、だんだん外国人の友達が増えて、電話で何気ない会話をその人たちとする事が増えてきたころに、やっと留学していることを実感しました。

語学学校では日本人が多いので、どこに行っても日本語は聞こえてきました。僕は、その人たちと日本語で話して時間を無駄にしたくなかったので、半年間くらいはほとんど日本語は話さないような生活で、何人かからは、韓国人なんじゃないかと思われていたほどでした。日本人の友達ももう少し作っておいて、情報交換がもっとできれば良かったと気づいたのはそれから少し後です。でもその努力の甲斐あって、ほかの人たちとは英語能力に明らかな差ができました。最初のクオーターに日本語チューターをして、アメリカ人の友達が増えたことで更に英語を磨く機会が増えました。そこで仲良くなった友達がいろいろな所に車で連れて行ってくれて、ほぼ毎週末サンフランシスコなど観光地に遊びに行って、カリフォルニアを満喫できました。また、サンクスギビングやクリスマスは家に招待してもらって、そこでアメリカ文化を学びました。やはり持つべきものは友達で、この友達無しの留学生活はつまらないものだったと思います。

そうやって遊び呆けて居られたのも最初だけで、僕の場合は、クオーター毎にキャンパスで取る授業を増やして、語学学校で取る授業を減らしていったので、時間と共に勉強で忙しくなっていきました。キャンパスの授業は語学学校のそれとくらべると、緊張感なんかがまったく別物で、授業の基準がアメリカ人なので、語学学校のように手を挙げて分からない単語の意味を聞くことなんかは当然できませんでした。テストで分からない単語が連発した時は一巻の終わりでした。最後のクオーターはキャンパスの授業しか取っていなかったので、それが一番きついクオーターで、毎週リサーチペイパーやテストが有ったので、土日も休んでいる暇はありませんでした。同じ境遇の人たちは皆、深夜まで勉強していたので、図書館が第2の家だと言っていました。

2.留学の成果

日本に帰ってきて気づいた自分の成長したところは、まず、初めて会ったときから物怖じせずに誰とでも話せるようになったことです。アメリカでは、スーパーマーケットでも、バスや電車の中でも、知る知らない関係なしに、近くに人がいれば話をするという感じだったので、会話を躊躇うということは無くなりました。また、いろいろな人種と会話する機会がたくさんあったおかげで、人見知りも無くなりました。やはり人は話してみないと中身が分からないもので、外見がとても恐ろしく、馬鹿でかい外人さんたちも、話してみれば心優しいことが多くて、やっぱり世界どこに行っても同じやな、と思いました。そしてもう一つ、これから先、世界のどこででも生きていける自信がつきました。英語さえ話せればなんとかなるだろうという考えです。

また、この留学で身に付けたスキルを生かせば、今まで見えてこなかった道が見えてきました。アメリカ、ラテンアメリカ、アジア、ヨーロッパ、中東など、世界中の人たちと異文化コミュニケーションをすることで、今まで日本しか知らなかった狭い視野が、ぐんと広がりました。物を見る時に、小さな日本というものさしの使い方しか知らなかったのが、世界という長さ・形が様々なものさしの使い方を知ることで、今まで見てきたものを違う角度から見ることができるようになりました。特に僕にとって刺激的だったのは、宗教の違いによるものの考え方の違いです。アメリカには、キリスト教、カトリック、仏教、ムズリム、ヒンドゥーなどの様々な文化が共生していました。同じ宗教でも、その国その国の文化の違いによって、更に考え方が異なります。そのせいで多少の問題が起きることは何度もありました。でも、それをただの問題として見るのではなくて、新しい発見として見て、お互いの文化の違いを受け入れることによって、更にお互いの理解が深まり距離が近くなった感じがしました。アジア圏の文化には日本と共通する部分が比較的多くありましたが、ラテンアメリカやムズリム圏とはほぼ完璧に物の捉え方が異なり、新しい発見の連続で、それらの国から来ている生徒たちと話をすることはとても刺激的でした。逆に韓国のような日本と近い国の文化は、とても似ているのに、やはり国が違うせいで、どこか少し違うと感じることがあり、それらの少しの違いにイラッとくることが逆によくありました。最初は自分の基準も日本だけだったので、異文化をそのまま受け入れることに抵抗はありました。でも、同じ時間を共に過ごして理解を深めることで、だんだんと自分の中に他の考え方を受け入れるスペースができました。お互いを受け入れた後のコミュニケーションはとてもスムーズで、これこそが異文化コミュニケーションなんだと思いました。アメリカ人達は、生まれたときからこういう環境で育つから大らかな性格の人が多いんだと思います。

また、様々な文化に触れることで、逆に日本の文化とはどのようなものなのか、他の国の人たちにどのように映っているのかを考えさせられました。宗教熱心な人が少ないせいか、日本は多文化に対して比較的開けていると感じます。異文化の混合体になっているアメリカは更に開けていると感じましたが、逆に韓国などは自国民主義というか、他の国の文化よりも、まず自文化を優先するという傾向が強いように感じました。

言葉だけを見ても、日本語はどのように響いているのか、文法はどういう仕組みになっているのかと、日本語をしゃべっている時に考えました。人生で一度も考えたことが無かったようなことですが、普段何も考えずにしゃべっている日本語を、意味を捉えずに、ただの音の連続として捉えようとすることは、難しいと同時に楽しみでもありました。勿論、日本語だけではなくて、英語を含む他の言語でも同じ事をしました。スパニッシュやアラビックなどには、人生で触れたことの無い言語だったので、音としてしか捉えようの無い物でしたが、僕は何か音楽を聴いているような感覚がしました。いろいろな言語を音として捕らえてみて、外国人に対する日本語の響きがどの様なものなのか聞いて思ったことは、何か、言葉の響きというのはその国の国民性に繋がっているのではないかということです。これは完璧に自分だけの意見ですが、例えば、英語は、僕にはどこかロマンティックに聞こえます。スパニッシュは良く言えば陽気に聞こえます。韓国語と日本語は似て聞こえましたが、中国語は違って聞こえました。これらには自分が感じたそれぞれの文化の性質と共通するものがありました。

1年経ってみて、たしかに英語能力はかなり伸びました。自分の英会話能力は他の日本人よりも伸びていたと感じますが、それは友達によるところがかなり大きいと思います。最初のクオーターに日本語チューターをしたことで、アメリカ人の友達ができ、その人達が最後まで一番仲のいい友達になりました。ただその人たちと遊んでいることが、また英語の練習になっていて、気づかないうちに上達していました。一方、多くの人たちは、自分の国から来ている人たちとだけつるんで、授業中以外は自国の言葉しか話さないという感じで、そんな人たちはいつまで経っても英語が上手く喋れないままでした。友達を作る機会に恵まれなかったと言って片付けてしまうのは簡単ですが、一歩前に踏み出して、何か自分でやってみるということをできなかった、それが一番の原因だったと思います。大学に入ってから、更に留学してからは特に思いますが、先が分からなくても、まず自分で行動を起こしてみることはとても重要だと思います。ただやろうと思うだけではまだ足りなくて、そこから踏み出す一歩が、そこからの将来を広げる可能性を持っていると感じます。

3.アドバイス

日本に居る間にやっておくべきことは、自然なスピードの英語にできるだけ慣れておくことと、今自分が英語で言えそうなことを言えるようになっておくことです。これだけで、留学の出だしが全然違ってくると思います。語学センターやE-Cubeは、英語での会話を練習するには最適の場所ですが、リスニングは映画やドラマを見て練習するのが効果的だと思います。先生たちはこっちが日本人だということを知っているので、それが先入観にあって、自然と話すスピードがゆっくりになり、それでは本当のスピードを聞いたときびっくりします。UCDの語学学校でおススメだったのは、「Friends」や、「Simpsons」です。これらは授業でもよく使われていました。スラングやフレーズなどがよく使われていますが、分からなかったら一回止めて確かめて、リストを書き出した後に、もう一回見直してみるといいと思います。こうしている内にいつの間にか何を言っているのかが分かるようになります。ちなみに、僕のおススメは「FamilyGuy」です。

デイビスに行った後は、勉強どうのこうのよりも、まず日本語チューターをしてアメリカ人友達の輪を広げるべきです。それか、JASSという日系アメリカ人のグループがあるので、そこへ行くのもいいと思います。日本語の授業を取っていたり、JASSに入っている人たちは、日本に興味がある人たちばかりなので、とても親しみやすいと思います。たいていの人たちは日本語と英語のバイリンガルなので、コミュニケーションもとりやすいです。しかし、彼らが日本語を喋れるということに甘えてはいけません。英語で話しかけましょう。自分は英語を学びに来ているんだ、という意識を高く持ち続けることがとても大事で、そこで成功するかどうかが決まると思います。学校では英語を喋っているんだから今ぐらい、という甘えが自分を奈落の底へ突き落とします。気づいたらいつも日本語を喋っていた、というのはよく聞く話でした。今自分は何をしているのか心に問いかけてみると、自分が何をすべきか見えてくると思います。

やはりそれなりに勉強することも大事です。よく言う、遊ぶときは遊ぶ、勉強するときは勉強する、というメリハリが日本で生活している時以上に求められます。自分は、勉強時間を見たら、普通の生徒の3倍はやったと思います。それは、いくら勉強していても日本語ならスッと入ってくるのに、英語でやるとなかなか覚えられないからです。

週末をいかにして上手に利用するかが留学の鍵を握っていると思います。アメリカ人の週末の過ごし方は、金曜日の夜はパーティー、土曜日はお出かけ、そして日曜日に勉強、という決まりきったようなスタイルがあって、彼らはこれで普通にいい成績を取りますが、こっちは日本人なので、いつも彼らに付き合っていたんでは本当にいい成績は取れません。本当に毎週どこかでパーティーがありますが、誘惑に負けてはいけません。自分を殺す術を身に付けると強いです。すべて根性で乗り切れます。