設計コンセプト
近畿大学英語村 E3[e-cube(イーキューブ)] 設計コンセプト
近畿大学英語村構想は様々な機能や活動、それに伴う複数の施設郡が文字通り村を構成するようなイメージで出発したが、むしろ1つの大きな箱の中に全ての要素を集約する方が、よりダイナミックで可変的な施設になると考えた。
当初は、まさしくBOX状のシンプルな、いわば飛行機の格納庫のような大空間を発想した。 しかしこの新施設が開校以来かつてない、またおそらくは他大学にも例を見ないユニークな企画であることを考えると、単に諸教室の増築ではなく、施設自体が他の建物と明確に一線を隔す特徴的な存在となるべきであろう。
そこで木造建築を思い立った。広いキャンパス内で木をふんだんに使った建物は何処にもない。鉄やコンクリートの教室郡に囲まれた中、唯一の木造建築は強烈な対比を持ってこの建物が特別の存在であることを物語る。
しかもE3の木構造は、旧来の伝統的な軸組み構造ではなく、全く新しい考え方による前代未聞の新工法である。もともとは梁材として使う大断面集成材を、菱垣上に組み上げることによって壁面を構成し、一辺約18m四方、高さ約10mの大空間が一本の柱も立てずに成立した。 純粋な大空間は、無垢の松材によって編まれた籠のように美しいリズムを奏で、菱型に開け放たれた開口部からは光がふんだんに降り注ぐ。
木で出来た構造体の周囲を、透明ガラスの被膜で覆っているが、これは内外を区画すると同時に、激しい外部環境から木を保護し、風合いを、長い年月かけてゆっくりと経年変化させるためのショーケースでもある。
そもそもこのユニークな構造を思いついたのは、大阪府南港にある海の時空館に展示されている浪華丸という木造菱垣廻船を見たときのインスピレーションによる。その船体に取り付けられた菱垣装飾の見事な造形は、日本人の繊細で精緻な美学と技術力の結集であった。
それは我々が世界に誇れる洗練された文化の象徴と感じたのである。その思いを現代的な発想によって英語村に結実させた。次世代を担う若い人たちに、英語学習だけではなく、空間体験を通じても、真のインターナショナルとは何かを考えるきっかけが生まれれば幸いである。
近畿大学 英語村E3[e-cube(イーキューブ)] 基本設計担当
岡本清文
近畿大学 文芸学部芸術学科准教授
