学科長挨拶

遺伝子が紡ぐ生命に分け入り、人の可能性を広げる

生命科学の究極の目標は、「生命がどのような仕組みで成り立ち、生命がどうして他ではくそのような仕組みの上で、今あるような姿をしているのか」を説明することです。
それにしても、その目標の深淵さはなんだろう。生命の多様で豊穣なことといったらない。単細胞生物からヒトまでその存在形態は、必然のように立ち現れ、幅広い。広すぎる。
生命を理解するためには、最終的に個体として生じる結果を見るだけではなく、その背後に存在するミクロの世界に分け入る必要があります。現象に関わる生体分子を同定し、その振る舞いを明らかにすることにより、個体レベルの現象を分子レベルの出来事に還元し、また分子レベルの現象を総合することにより、上のレベルの階層の現象を描出するわけです。ここにおいて遺伝子は決定的に重要な役割を演じます。
というより、生命科学者は、遺伝子で生命を語るのです。

こうして知的に高揚した現代生命科学は、極めて学際的な領域として発展をとげており、一つの細胞や遺伝子の働きを調べるような基礎研究から、ガン研究や再生医療などの応用研究へと幅広くその射程を広げています。このような広範な学問領域として影響力を拡大し、人間生活を根本的に変える可能性のある生命科学。その基礎から応用までの最先端の知識を修得し、社会で活躍できる人材を育成することが、遺伝子工学科の教育目的です。

科学について勉強し、世界のありようを知ることは楽しいことで、なかでも生命に触れ、生命を理解することには特別な喜びがあると思います。生命が始まる瞬間を、生命が躍動する瞬間を、生き生きとした言葉で語ることには特別な意義があると思います。
だから言えるのです。素直に。饒舌に。
遺伝子によって紡ぎ出される生命について、その根底に流れる普遍的な真理について、是非、触れてみてください。そして、遺伝子と生命がつくりだす濃密な時間を体験してください。

学科長

宮本 裕史
HIROSHI MIYAMOTO
遺伝子工学科長/遺伝子工学科 教授