医学部の教育方針

医学部 医学科

ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)

本学では「建学の精神」と「教育の目的」に基づいて、「深い教養と高い志を持ち、社会を支える気概を持った学生を育成し、社会に送り出すこと」を最終教育目標としています。
医学部では、これに基づき、広い学問的視野・知識・技能・継続的な学修姿勢とともに奉仕の心と高い倫理観を有し、国内外の医療・保健・福祉に貢献できる「人に愛され、信頼され、尊敬される医師」を育成します。
6年間にわたる全教育課程を修了し、以下の資質・能力を身につけた学生に学士(医学)の学位を授与します。

1.
卒後に必要な医学の知識と技能を修得し、医学の進歩に対応できる生涯学習の姿勢を身につけている。
2.
医療の社会的役割を理解し、地域社会・国際社会に貢献できる。
3.
積極的に課題に取り組み、医学研究に発展させる問題解決能力を身につけている。
4.
チーム医療・患者への対応に必要なコミュニケーション能力と協調精神を身につけている。
5.
プロフェッショナルとしての高い使命感と倫理観を持ち、患者・生活者を総合的に理解する姿勢を身につけている。

カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)

ディプロマ・ポリシーの達成を目的として、医学部では6年一貫型の学修成果(アウトカム)基盤型教育を実施しており、その実践のためのカリキュラムを編成しています。本カリキュラムでは、教育アウトカムに関連づけられた内容を繰り返し学び、その到達度が徐々に向上するよう、各科目が順序性に基づいて配置されています。各科目を、基礎医学や社会医学と臨床医学を統合しながら学びます。また、症候・病態を共有する臨床医学が統合され、教育されます。カリキュラムには、Problem-based learning(PBL)テュートリアル、Team-based learning (TBL)などの能動的学修を積極的に取り入れ、自律的学修能力、論理的思考能力、問題解決能力、科学的探究心の養成に力を入れています。また、入学後から段階的かつ継続的に医の倫理とプロフェッショナリズム、行動科学を学修し、患者・生活者の総合的理解や国内、国外における医療の社会性を理解など、医師としての高い資質を養います。さらに、低学年から地域医療・保健の現場を体験し、実際の診療への参画を深めながら臨床実習へと段階的に進むカリキュラム構成となっています。

1.
卒後に必要な医学の知識と技能を修得し、医学の進歩に対応できる生涯学習の姿勢を身につけている。
1学年では生物、化学、物理学など医学学修のための基礎科学を学びます。また、医学の基本となる解剖学講義と実習が後期から始まります。2学年の基礎医学では各教科をテュートリアル、講義、実習の三位一体で学びます。3、4学年では、垂直統合、水平統合のうえ、系統立てられた臨床医学を学びます。臨床実習前には、症候と病態を切り口としたテュートリアル教育により臨床推論能力が培われます。4学年後期に公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構が実施する共用試験に合格し、臨床実習開始のためのClinical Clerkship Traineeの資格を得ます。次いで臨床全科を順次回る1年間の臨床実習Ⅰ(ローテーション型)により医学的知識や技能・態度が養われます。5学年後期からは自ら選んだ診療科を中心とした臨床実習Ⅱ(選択型)が行われます。ここでは長期の診療参加型実習が行われ、医師にとって必要な資質が研修開始可能なレベルにまで高まります。
低学年から臨床実習までの情報科学やエビデンスに基づいた教育を通して、情報・科学技術などの医学の進歩に対応できる生涯学習の姿勢を培います。
2.
医療の社会的役割を理解し、地域社会・国際社会に貢献できる。
1学年では、人権と社会、法学部との文理融合授業、医療イノベーションなどの講義と演習により、医療と社会の関連を理解するための幅広い分野の教養が培われます。また、グローバルヘルス概論、環境と社会などにより健康・福祉の問題、環境汚染、国際感染症や国際保健医療協力などの国内外における医療・保健について学びます。2学年では社会医学の基礎を、3学年ではその応用を学びます。1学年の医学英語では、医療に関する英語をグループによるアクティブラーニングやe-learningなどで学修することにより、コミュニケーション能力や読解力が養われます。2学年から4学年までは並行して実施される科目講義に関連付けて医学英語を学ぶことにより、国際化に対応できる英語力が身につきます。臨床実習では、臨床現場で医療の社会性について学び、地域社会や国際社会へ貢献できる能力が修得されます。
3.
積極的に課題に取り組み、医学研究に発展させる問題解決能力を身につけている。
1、2学年では、実習や小グループ学修により自ら積極的に課題を見出し論理的に解決する姿勢を養います。また、医学上の課題解決の手法を研究現場で学ぶことにより、科学的探究心が培われ、将来の医学研究への基盤となります。3学年でも症候と病態に対応した課題解決に取り組みながら、臨床医学を学びます。4学年の臨床実習前に実施されるテュートリアル集中コースを通じて、主体的に課題に取り組む姿勢が強化されます。臨床実習により、症例の問題点を見出しエビデンスに基づき論理的に解決する姿勢や能力が修得されます。
4.
チーム医療・患者への対応に必要なコミュニケーション能力と協調精神を身につけている。
1学年から4学年前期には、実習、小グループ学修、多職種連携教育における教員や他の学生との議論を通して、チーム医療、医療安全、患者への対応に必要なコミュニケーション能力と協調精神の基礎を培います。4学年後期から始まる臨床実習ではチームの一員として診療活動に参画することで、コミュニュケーション能力と協調精神をさらに養います。
5.
プロフェッショナルとしての高い使命感と倫理観を持ち、患者・生活者を総合的に理解する姿勢を身につけている。
1学年から4学年まで継続的かつ段階的に倫理と行動科学を学修することにより、患者を含めた他者を総合的に理解する姿勢や、患者への思いやりと奉仕の精神を基盤とした高い職業意識が培われます。
1学年から3学年では早期から医療現場に触れる地域医療実習や病棟実習にてプロフェッショナリズムを学ぶことにより、臨床実習開始前に高い使命感と倫理観が育まれます。4学年後期からの臨床実習においては、患者の抱える問題を心理社会的背景も含めて総合的に理解する姿勢を身につけ、「人に愛され、人に信頼され、人に尊敬される医師」を目指して生涯学習に取り組む姿勢が培われます。
学修成果の達成度の評価
1.
医学教育上の順次性を考慮し、原則、年度ごとの進級基準を設け(学年制を採用)、進級判定あるいは卒業判定を行います。
2.
知識とその応用力(思考力)、問題解決能力は筆記試験(MCQ、記述式試験など)で評価します。
3.
実習を伴う科目では、技能・態度・コミュニケーション能力を重点的に評価します。評価には実習現場評価法(レポート、スケッチ、ルーブリック、およびポートフォリオ)を用います。
4.
筆記試験、口頭試問、実技試験は数値化することにより到達度を評価します。実習でもルーブリックによる数値評価法を用いて到達度を評価します。
5.
4学年の後期に実施される医療系大学間共用試験にて臨床実習に必要な知識、技能、態度の修得度を評価し、合格すればClinical Clerkship Traineeの資格が与えられます。臨床実習では知識、技能、態度(倫理観、プロフェッショナリズム、行動科学的側面などを含む)、思考力をCC-EPOCなどを用いて委託可能業務(EPAs)に基づいたルーブリックで評価します。また、6学年では卒業認定に必要な到達度を評価するため、総合試験および臨床実習後客観的臨床能力試験を実施します。

アドミッション・ポリシー(入学者受入れ方針)

医学部は、近畿大学建学の精神に則り、「実学教育」と「人格の陶冶」を目指します。また教育の目的に則り、「人に愛され、人に信頼され、人に尊敬される医師」の育成に努めます。本学の「建学の精神」と「教育の目的」に共感し、将来、良き医師として社会に貢献することを志望する下記の資質・能力をもつ入学者を受入れます。

1.
医学を志し、そのために必要な強い意思と高い理想を持つ人。
2.
医学の課程を学ぶために十分な基礎学力と継続的学修姿勢を備える人。
3.
自ら課題を発見し、解決していく意欲にあふれる人。
4.
奉仕の精神と協調精神に富む人。
5.
倫理観と責任感に富む人。
6.
医療を通じて地域社会、国際社会に貢献する意欲のある人。

また、医学部に入学するまでに、医学学修の基礎となる以下の教科についての履修と十分な知識・理解・修得を望みます。

国語

専門教科書レベルの読解力、及び標準以上の表現力、発表力、論理的思考力など

外国語

専門教科書レベルの読解力、及び基本的な文章力と会話力

数学

「数学Ⅰ・数学Ⅱ・数学A・数学B」

物理

物理基礎・物理

化学

化学基礎・化学

生物

生物基礎・生物

地歴・公民

個人と社会を取り巻く様々な状況を理解し、的確に対応するために必要な知識と教養

入学試験での評価は、以下のように行います。
基礎学力については、個別学力試験、大学入学共通テストおよび小論文で評価します。医師としての高い理想、自ら学ぶ意欲、奉仕の精神、協調精神、倫理観、責任感については、小論文、面接で評価します。

医学部の使命

本学の教育の目的に基づき、人に愛され、信頼され、尊敬される医師、卒後に必要な医療の実践力とさまざまな医療分野で活躍できる知識・資質を有する医師、国内外の医療・保健・福祉において社会的貢献ができる医師、医学の進歩に対応できる継続的な学修心・研究心を持つ医師を育成することを目指します。

教育アウトカム

【倫理とプロフェッショナリズム】

人の健康と命を守るという医師の職責を十分に自覚し、医師として社会からの信頼が得られるように、高い倫理観と医師に相応しい教養、品格、礼儀を持ち、品行を常に高く保つ。患者の多様性・人間性を尊重し、奉仕の精神に基づいた利他的な医療を通じて社会に尽くす。

【卒後に連結する医学的知識と診療技能】

医学及び関連する分野の知識と技能を身につけ、それらを活用することは、医師としてのあらゆるコンピテンスの基本となる。卒後研修における医療の質と患者の安全を担保するために、医学教育モデル・コア・カリキュラムに記載されている卒業時に必要な医学的知識と確実で患者から信頼される診療技能を身につける。

【コミュニケーション能力】

患者・家族の課題を把握し、医療内容のわかりやすい説明を通じて良好な関係性を築き、患者・家族の意思決定を支援する。また、医療チーム内での適切な情報の共有、意志決定への参画、他の診療科との連携など、円滑な診療を通じて質の高い安全な医療を実践する。これらに必要な非言語コミュニケーションを含めたコミュニケーション能力を有する。

【チーム医療と医療安全】

患者・家族の医療・保健・福祉・介護などに関わる全ての職種の役割を理解したうえで、医療チームの中で信頼関係を築きながら協働し、互いの知識・技術を活かし合い、医師としての役割を全うできる。医療安全に必要な基本的知識と技能、患者の安全を常に第一に考える態度を身につけ、チーム医療の中での安全管理を理解し、ルールを遵守する。

【国内外における医療の社会的役割の理解】

医療は社会の一部であるという認識を持ち、経済的な観点、地域性の視点、また、国際的な視野を持ちながら、これらを理解したうえで、公正な医療を提供し、公衆衛生の向上に努める姿勢を持つ。また、患者の健康観や社会的背景を理解したうえで、社会科学の視点・理論・方法を通じて、医療、介護、福祉などに活用する能力を持つ。

【課題解決能力と医学研究への発展】

分子レベルから個体レベルまでの科学的思考に基づいて各種疾患の病因と病態を理解し、エビデンスに基づいた医療を通じて課題の解決に当たる。未解決課題に対しては、科学的思考を基盤として、医学研究に発展させる姿勢をもつ。

【自律的継続的学習能力】

安全で質の高い医療を実践するために、日々刷新される医療情報、医療技術について、自ら学び、生涯にわたって自己研鑽を続ける資質をもつ。また、自ら得た知識を後輩などの周囲の医療関係者への教育にも活用する。

【医療の国際化に対応できる能力】

国内のみでなく国際社会の中で規定される医療の役割と医療体制について概要を理解し、社会背景、言語、文化の違いを超えて適切な医療を実践する能力を身につける。

【総合的な患者・生活者理解に基づく診療姿勢】

患者・家族が抱える問題を、年齢、文化的、社会的背景を踏まえて総合的に理解し、自身の専門領域にとどまらず臓器横断的に捉えた上で、患者・家族のニーズに応じた診療を行い、個人と社会のウェルビーイングに資する診療姿勢を身につける。

【情報・科学技術を活かす能力】

質の高い医療・医学研究を実践するために、発展し続ける情報化社会において新たに開発される人工知能などの情報・科学技術に関する基本理論を理解し、自身の学修や医療・医学研究に活かす能力を身につける。

【地域医療・保健医療・福祉への貢献】

医療へのアクセスの容易性、医療資源の充足など、各地域の医療体制における医療・保健・福祉・介護の現状及び課題を理解し、これらに関わる組織、専門職と積極的に協働し、ヘルスケアシステムの質向上に貢献する姿勢を身につける。また、医療の基本としてのプライマリ・ケアの実践能力を獲得し、地域の医療体制や診療機関の規模・役割に応じて医師としての役割を果たすことができる。

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