このページの本文へ移動します。

クロスオーバー(広報誌)

2010年秋 Vol.6 巻頭特集

巻頭特集研究フロンティアレポート
身近なバイオマスから新しい固形エネルギーを創り出し、循環型社会の構築に挑む
植物由来の次世代バイオ・リサイクル燃料「バイオコークス」の研究・開発

大きな可能性を秘めるバイオコークス

生物由来の有機物である「バイオマス」を化石資源に替わるエネルギー資源として活用しようという動きが、近年ますます活発になってきた。日本政府が推進する「バイオマス・ニッポン総合戦略」でも、「国産バイオ燃料の本格的導入」「林地残材などの未利用バイオマスの活用等によるバイオマスタウン構築の加速化」などが目標として掲げられている。
近畿大学では2000年から、理工学部機械工学科・井田民男准教授の研究チームが中心となって、植物由来の次世代バイオ・リサイクル燃料「バイオコークス」の開発を進めてきた。バイオコークスは、ほぼ全ての光合成由来のバイオマスから製造可能な固形燃料であり、飲料工場から大量に排出されている「茶かす」「コーヒーかす」などの廃棄物や、従来使い道がなかった雑草など、身近なバイオマスを活用して製造できる点に大きな魅力がある。

バイオコークスは、

  1. (1) 製造時に新たな廃棄物を出さず原料が100%活用できる
  2. (2) バイオマス燃料であるため、CO2排出量を削減できる
    (原生植物由来の場合、排出量ゼロとカウントされる)
  3. (3) 食糧、飼料を消費せずに済む

などの特徴を備えた有望な次世代燃料であり、現在鋳造産業等で使われている石炭コークスの代替として期待される。他にも、農業用、家庭用など、さまざまな用途に活用できる可能性をもっている。

実用化に向けた取り組み

近畿大学では2008年4月、北海道恵庭市のバイオコークス量産実証実験センターにバイオコークス製造装置(試験機)を設置し、以来、さまざまな実証試験に使用するバイオコークスを製造してきた。また2008年4~7月、(株)豊田自動織機 東知多工場(愛知県)において、自動車エンジン部品を製造するキュポラでの実炉実証試験を行い、バイオコークスが石炭コークスの11.4%を代替することを確認している。

TOPICS1 バイオコークス 量産化に向けて始動

2010年4月27日、井田民男准教授の研究チームは、鋳鉄溶解プラントメーカーである株式会社ナニワ炉機研究所(大阪府東大阪市)との共同開発で開発したバイオコークス製造装置を報道関係者に公開しました。
この製造装置は、商用機の開発へ向けたモデル機として、効率・コスト面で従来の試験機をしのぐ能力を備えています。製造能力は恵庭市にある試験機の約4倍あり、10時間連続操業で約400kg、24時間で約1トンのバイオコークスが製造できます。成型されるバイオコークスは、最大で1本あたり長さ約100cm 、直径約10cm、重さ約10kgの円筒形。バイオマスを加圧・加熱する円筒形の反応器は4基です。また、今回、製造装置へのバイオマスの供給方法が人力から全自動に代わったことで、24時間連続での自動運転が可能になりました。
製造装置は現在、経済産業省「平成21年度ものづくり中小企業製品開発等支援補助金(試作開発等支援事業)・事業主体;(株)ナニワ炉機研究所」による支援を受け、実証試験を行っています。井田准教授のチームは、今後、バイオコークスの産業利用へ向け、さまざまな実炉試験・燃焼試験を行ってデータを蓄積し、現在の12倍の規模となる48基の反応器を備えた、商用レベルのバイオコークス製造装置の設計・開発を行っています。
地球温暖化ガス排出量の抑制に取り組む鋳物業界をメインターゲットに、量産・実用化へのシナリオが軌道に乗ってきました。

TOPICS2 社会の中で生きる、近畿大学発のエネルギー関連技術
~環境モデル都市宣言を行った北海道下川町のケース~

ウィンタースポーツが盛んなことで知られる北海道下川町は、町の面積64,420ヘクタールの90%が森林です。かつては金鉱、銅鉱で栄えましたが、産業構造の変化に伴って過疎化が進んでいます。転換期を迎えた同町は、新たな産業創造による地域経済の活性化を目指し、森林資源の活用に力を注ぎ、国内でもいち早く循環型林業経営を実現しました。
近畿大学と下川町との関わりは、下川町が2008年、「環境モデル都市」に選定されたことをきっかけに始まりました。近畿大学は経済産業省及び北海道経済産業局の委託を受け、下川町と連携しながら低炭素社会の実現に向けた温室効果ガスの大幅削減などの取り組みの一環として、森林資源及び草本(1年を単位とする循環資源)を用いた高硬度固形燃料「次世代ゼロ・エミ燃料」の製造と、その燃料を用いた燃焼システムの開発に着手。企業や他大学の協力も得て、産官学協同の事業を展開しました。
理工学部の井田民男准教授は、植物由来のバイオマスを低温中圧( 180℃、20MPa)で非炭化圧縮成型する「モバイル型の燃料製造システム装置搭載車」と「農業用小型バイオコークス専焼ボイラー」を開発し、実証実験を行いました。このプロジェクトにより、現地で自生するイタドリなど、これまで未利用だった雑草などからバイオコークス燃料を製造し、農業用ビニールハウスの加温ボイラーに適用し、冬季トマト栽培への道が開けました。下川町では今後、高い付加価値がある野菜やフルーツ栽培に生かしていく予定です。また、この草本資源等を高密度、高硬度のコークス代替燃料に変換することにより、長期の炭素エネルギー備蓄が可能となります。今後はこれらの成果を起点に、日本社会がバイオ燃料利用技術の拡大を通じて化石資源からの脱却を図り、低炭素社会へと転換していく青写真が描かれていくことでしょう。
近畿大学では本事業をきっかけとして、北海道だけではなく国内、アジア各国への貢献も視野に入れ、さまざまな地域にバイオコークスによる低炭素社会システム化が広がることを目指していきます。

バックナンバー

クロスオーバートップへ戻る

©Kindai University All Rights Reserved.このウェブサイトの内容の無断転載・複製を禁じます。